久しぶりに,そばを打った。
去年の秋そばの粉が買ったきりで,このまま年越しのそば粉にしては拙いと思い,土曜日の晩に仕事に取り掛かった次第。
北海道産のそば粉500グラムに,強力小麦粉100グラム,熱湯240グラムの配合とした。
粉600グラムに対して,湯が240グラムで,そば打ちの世界では,加水量40%という計算になる。

そば打ちの工程に,菊練りという作業がある。
水と混ぜた粉を捏ねる作業だ。
粉を塊状にして,空気を追い出し,中にスが入らない状態にもって行く。
麺塊の辺縁部をつぶしながら回して行くと,全体が菊の花のような形になるので,菊練りと言うのだ。
ここを丁寧にやらないと,塊を延して細断し麺線にしたときに,スの部分で切れてしまい,長い麺線にならない。



菊練り工程では,その前の段階での加水量が少ないと,粉の塊が硬くて練ることができない。
逆に,加水量が多すぎると,ズルズルの塊になり,ピンと角の立ったそばにならない。
でも,できることならばなるべく加水量を少なくしたいもの。
そこで,今回は,人力での菊練りは諦めて,マシーンによる圧延で代替することにした。

Noodle Machine 最初の写真が,製麺機だ。
スパゲティを作る道具であり,「パスタマシーン」の名で売られている。
ハンドルが刺さっている写真左下部が圧延用のロール部で,右上は細断用のカッター部だ。
実は,以前からそば打ちに製麺機を使用していたが,細断と,その前処理として麺を帯状に延ばすことを専らとし,菊練りの代替はしていなかった。


素人の趣味としてのそば打ちでは,もっとも高価な道具は包丁だ。
そば切り包丁は,出雲の砂鉄から鍛えた鋼のものが高級とされ,1丁が数万円する。
それに比べて,製麺機は高くて1万円というところ。
それもイタリア製でだ。

今回試た菊練りの代替作業は,つぎのとおり。

  1. 完全に捏ねていない麺塊から包丁で100グラム強を切り出して,団子状に丸める。
  2. 団子をつぶし,直径10センチメートル程度の円盤にする。
  3. 製麺機のハンドルをゆっくり回しながら,団子をローラーで圧延する。
  4. ローラーから出てきた麺帯を3つに畳み,90度向きを変えて,再び圧延する。
  5. この三つ折り再圧延の工程を更に2回繰り返す。

都合3回圧延を繰り返した麺帯に,打ち粉を振って細断すれば,美味しいそばの出来上がりだ。


食卓に供したそばは,2枚目の写真。
茹でても切れない,長い麺線。
香り,喉越し,ともにいままでの自作そばでは経験したことのない,高レベルのものだった。

スパゲティの材料は,デュラム・セモリナと呼ばれる,粉質が非常に固い,粗挽きの小麦粉だという。
その粉は,とても人力で捏ねられるものではなく,このような製麺機で圧延するとのこと。

手打ちそばの良さとは,手作りの良さだ。
しかし,手作りの中に,どこまで手を抜けるかを考えることも,趣味として奥深いと思う。

ともあれ,美味しいそばにありつけて,メデタシ,メデタシ。
noodle