バブル崩壊後「失われた20年」と形容される日本経済。しかし、この停滞した状況でも、時価総額を大きく増加させた企業もあることは注目に値する。特に、ユニチャームはこの20年間に時価総額を約10倍に増加させている。2000年以降、中国や東南アジアの市場を積極的に開拓し、この20年間で、海外市場での売り上げを40倍に増加させている。「選択と集中」と「グローバル化」を推進した企業として、経営学の教科書で紹介すべき超優良企業である。

日本の国内市場では、スマートフォンに代表されるように、多機能、高性能、高品質を宣伝文句とする新商品の発売が延々と続く。そして、ほとんどの商品に、覚えきれない、使いきれない、必要ないという3拍子揃った機能が満載されている。それでも、さらなる新しい機能を追加しようと、競争がますます激化していく。その結果、商品はますます高価になっていく。もちろん、ビジネスの観点から見ると、正しい戦略ではあるが、この戦略を推進して、グローバル市場で成功するには、グローバル市場が日本市場のように成熟する必要がある。しかし、それには、まだ長い時間が必要である。

日本商品の高性能・高品質は世界的に有名で、「トヨタ・クォリティ」は立派な英語として通用する。しかし、長期的には成長途上にある新興国の市場を開発することは必要である。日本商品の存在感が低い東欧、アフリカ、中南米市場での、韓国企業と中国企業の存在はますます強くなっている。このような新興国の市場では、日本が誇る高性能・高品質商品は、中国製や韓国製に勝てない。不要な機能が多すぎる上に、価格が高すぎる。これは、時価総額増加率の上位に、電機メーカーの大手が一社もないという事実と無関係ではない。

日本は、良くも悪くも単一民族の国で、四方を海に囲まれ、日本語という共通の言語でビジネスできる市場である。しかし、新興国の市場は、これらの常識はまったく通用しない。ビジネスは自社の素晴らしい技術を中心に回っているという天動説では、これから重要になる新興国の市場では戦えない。市場の要求に臨機応変に対応する地動説の重要性がますます大きくなる。(Written by Shigeo Sunahara of CBC, Inc.)