首都圏にある地方自治体が、特産の梨を使ってブランデーを作ることを思い立って、商業化しようとしたが、うまくいかない。それではと、公募で一般人から社長を募集して、事業の建て直しを図ったが、業績を回復させることはできなかった。このケースの根本的な問題は、梨のブランデーがビジネスとして確立できるほどに売れるかということである。このように、自治体が特産の農産物を利用してブランデーやワインを造って売り出すという話は多い。

しかし、大抵は上手くはいかない。当然である。そのような商品は、すでに誰かが試して、うまく行かないことが実証されているからである。多くの果実が醸造されて商品化の試行錯誤の結果、商品化に適したものだけが現在の市場に残っているのだ。同じことがジャムにも言える。梨のジャムや桃のジャムなどは、多くの人々がすでにビジネスとして取り組んで、事業化に失敗しているのである。さらに、一次産品は市況に大きく左右される。仕入れコストが高いからといって、ブランデーやジャムの製造を中断するわけにはいかない。大手企業が商品化しないものを、地方自治体が商品化を試みることが、そもそも無理と考えるべきである。

商品を開発するには、市場の声を聞き市場の動向を詳細に観察して商品コンセプトを考えるべきで、自社の技術や独自のアイデアから商品開発の発想をすべきではない。事業は、市場と顧客を対象とした活動である。そのため、新商品は市場と顧客とについて、様々な検討をする必要がある。一番重要なことは、まず、市場の声を聞くことである。(Written by Shigeo Sunahara of CBC, Inc.)