ビジネスが戦争である以上、勝たなくては意味がない。その意味で、時には相手を圧倒するような仕掛けも必要になる。しかし、資金の裏づけのない仕掛けは、時がたつと必ず色あせる。ビジネスには、見栄は禁物である。見かけだけの仕掛けを作ってもすぐにメッキがはがれる。金型業界で大きな注目を集めていた企業が、約150億円の負債を抱えて民事再生法の適用を申請した。

創業から破綻するまで20年の軌跡をみると、新興企業がたどる典型的なストーリーを見ることができる。売上が急増すると、超一等地のビルに本社を移転し、事務所をまるで宮殿のように飾り、その優雅な労働条件で優秀な人材を魅了する。そして、経営者の頭にあるのは成長という二文字だけ。この企業の最大の問題点は、自動車業界にビジネスの60%を依存していたことである。焦点を合わせている業界が、間断なく成長してくれれば、問題はない。しかし、世の中そんなにうまくは行かない。一つの業界に依存するのは、20%が限界である。20%なら注文が途絶えても何とか乗り越えることができる。普段から技術を磨くとともに、焦点を合わせる業界を多角化する努力を怠ってはいけない。見栄をはることにだけ魅力を感じていると、市場から厳しい判断を受けることになる。(Written by Shigeo Sunahara of CBC, Inc.)