調査会社によると、現在20%を占める65歳以上の高齢者の割合は、23年には30%に達する。この予測に対応して、大手食品メーカーが高齢者向けの食品事業を拡大している。この戦略は基本的には、市場の細分化の典型といえるが、イノベーションとイミテーションの観点から考えると、少し違った分析ができる。つまり、大手食品メーカーの戦略は、食品市場という枠内でのイミテーション戦略ともいえる。もちろん、競争会社と同じ戦略で同じ商品を投入しても意味はない。そこで、市場をさらに細分化して、商品を差別化することが必要である。

現代は、イノベーションの社会であると考えてしまうが、実際は、イノベーションよりもイミテーションのほうが多いばかりでなく、企業に利益と成長をもたらしているのは、イミテーションなのである。早期にイミテーション戦略を選択すれば、他のイミテーターが参入するまで安定した利益を追求できる。逆に、イミテーション戦略の選択が遅いと、成功の機会を取り逃がす。どのような企業でも、自社で生み出せるイノベーションには限度がある。そのため、イミテーションは、激しい競争の時代に生き残るためには必要な戦略ともいえる。 (Written by Shigeo Sunahara of CBC, Inc.)