「これは一大事。我々のビジネスは消滅する」とアメリカ中の書店が大騒ぎした。アマゾンがインターネット上で書籍販売を始めたときの話ではない。19世紀末に、全米で図書館網の整備がすすみ、図書館の数が急増したときの話しである。しかし、書店主の心配をよそに、書店がなくなることはなかった。そして、アマゾンが売上を伸ばしているからといって、書店がなくなってしまったという話も聞かない。それどころか、大型書店は増え、ブックオフが業績を伸ばしている。

ここで必要なのは、競争と協調の視点である。つまり、ネット書店は、店舗書店と競争しているが、同時にお互いを補完する立場にあるということである。書店で実際に手にとって、気に入った本を購入する消費行動も、ネットを利用して、書評を参考にしながら自宅から本を購入する消費行動も、書籍の販売量を伸ばしていることになる。そして、究極的には、本の出版に関連する、書店、出版社、流通業者、作家のビジネスを活性化する結果となっている。大きな技術革新があると、ビジネスに劇的な変化が起こると考えがちであるが、消費行動は、劇的には変化しないものである。 (Written by Shigeo Sunahara of CBC, Inc.)