激震が続くデトロイト。ついにGMの一時国有化が決定した。これで、Big Threeで、本当の意味で生き残ったのはフォードだけとなった。フォードが生き残ったのは、新社長になったアラン・ムラリーに負うところが大きい。ボーイングからリクルートされてフォードの社長になった彼が最初にやったことは、ジャガーやランドローバーのような、不採算部門切り捨てである。そして、彼は、トーラスの復活と小型車への資源集中を決定した。

新社長の速断は、不採算部門をいつまでも切り捨てることの出来なかったGMと好対照である。事業環境が変化するにつれて、商品構成も見直す必要がある。売れない車を何とかして売れる車にするよりは、売れない車を切り捨て、売れる車をさらに売れる車にするのが理にかなった戦略である。1986年に発売され素晴らしい売れ行きを記録したトーラスの新型車がまもなくデビューする。新社長は、好調な売れ行きを見せた自社の素晴らしい車に注目せずに、他社の車に目を奪われた戦略の間違いを指摘している。最後に頼りになるのは、自社の技術である。技術革新は手を休めた企業が負ける。技術革新に必要な資金を確保する意味でも、不採算部門の切捨ては避けることの出来ない決断である。 (Written by Shigeo Sunahara of CBC, Inc.)