格安航空会社がマスコミに大きく報道されてから久しいが、最近、かつてのような騒ぎが見られなくなった。格安航空会社は、もともと米国のサウスウエスト航空が確立したビジネスモデルで、食事等のサービスを撤廃し、単一機種を使用しメンテナンスコストを削減し、大空港の側にあるローカル空港を使って航空機の待機時間を減らし、予約はすべてオンラインで行う等の革新的な戦略で、格安航空券を可能にした。アジアのベンチャー企業が、同じコンセプトで、次々と格安航空ビジネスに参入している。

ヨーロッパでも、格安航空券はブームになり、格安航空会社は大きく業績を伸ばした。しかしどの格安航空会社も、利用者数が伸び悩み、さらなる飛躍を求めて、新しい戦略を構築中である。ヨーロッパで最大の格安航空会社は、アイルランド国籍のライアンエアーであるが、この企業の業績をみると、旅客数の伸び率が、近年鈍化しているのが理解できる。2009年以前は14%であった伸び率が、2009年から2010年には6%に激減しており、2013年以降は4%になると予測されている。

そのため、ライアンエアーは格安航空会社の看板はおろさないが、新しく開拓するルートでは、格安航空券の発売はしないと発表している。つまり、格安航空券を販売して旅客数を増やす戦略でなく、旅客一人当たりの売り上げを上げて、収益を改善させようという戦略である。パリのドゴール空港のような大空港を使用して、大手航空会社と勝負する格安航空会社まであらわれた。格安航空券だけでは、生き残りは難しいため、大手航空会社と真っ向勝負である。

格安にするため、無駄をはぶくとしても、目の付け所は、どの航空会社も同じ。同じ戦略で、同じルートで、同じような顧客を対象にして航空機を飛ばしても、うまみはなく、激しい競争が収益を悪化させるだけである。景気が悪くなって利用者が減少すると、もともと利益が少ないだけに、資金繰りにも苦労する。ある格安航空会社は、航空機を購入するとき、数量割引に目を奪われて多数の航空機を購入した。その結果、事業規模に比較して、保有する航空機が多すぎて、航空機を十分に活用できていない。

これからは格安航空会社も、対象とする顧客や飛行ルート等で市場を細分化し、高収益体制を構築しなければ生き残れない時代になったようである。そうしないと、市場から消えていった格安航空会社のあとを追うことになる。(Written by Shigeo Sunahara of CBC, Inc.) (Source: The Economist January 29th 2011)