ビジネスも戦いである以上勝たないと意味がない。孫子が述べているように、戦わずして勝つのが最高である。百回戦って百回勝っても、それは最上の勝利ではない。戦わずして相手を屈服させることこそ、最上の勝利なのである。景気が停滞して消費が低迷すると、多くの企業が商品の値下げに走り価格競争に突入する。そして、広告宣伝も次第に挑発的になっていく。価格競争を挑まれた企業は、値下げに敏感に反応して、戦いはますますエスカレートしていく。

しかし、どのような企業であっても、投入資源には限界があり、それを使い切れば防御不能な状態に陥る。そうなると、市場は混乱し、企業の業績は悪化し、株価が低迷する。やはり、徹底的な価格対決は避けるべきである。対決の様相が強くなったら、価格競争が支配する市場で、辛うじて生き延びる代わりに、創意工夫が発揮できる市場で、競争優位を確立する戦略を選択すべきである。鉄道にしか応用できていなかった鉄を、建築に応用したのはアメリカで、その技術がニューヨークの摩天楼を可能にしたのだ。 (Written by Shigeo Sunahara of CBC, Inc.)