3大


アウトソーシング、「派遣切り」教訓の欧州戦略

証券部 田口翔一朗

日経新聞 電子版

 技術者派遣大手のアウトソーシングは5月2日付で、オランダの人材サービス会社オットーホールディング(HD)を買収する。

オットーHDは同国やポーランドで人材派遣や紹介を手がけており、単純合算すると欧州の売上高比率は3割近くになる。人手不足が深刻な日本では派遣などの引き合いが膨らんでいるが、土井春彦社長は2008年のリーマン・ショック後に社会的な話題になった「派遣切り」の記憶が鮮明だ。政府機関の仕事を民間に委託する動きが広がる欧州に事業を分散して、景気の変動リスクを避ける戦略だ。

 アウトソーシングは主にメーカーへ、技術開発者や生産ラインのスタッフを派遣している。自動運転車の開発競争なども背景に、2018年12月期は連結売上高が2900億円(前期比26%増)、純利益は69億円(12%増)と6期連続の過去最高益を見込んでいる。

 ただ土井社長は「国内の需要はそう長く続かない」とあくまで慎重だ。リーマン・ショック当時に利益の大半を製造ライン向けの派遣で稼いでいた同社は、契約の打ち切りが相次ぎ、09年12月期には上場来初の赤字に転落した経緯がある。企業が契約更新を相次いで見送った「派遣切り」の横行は批判を浴びた。それだけに「景気に左右されない事業づくりが必要」(土井社長)との意識が強い。


 そうした思いから、まず取り組んだのがアジアへの展開だ。10年に製造業向けの業務請負の会社を中国に設立したのを皮切りに、11年にはタイやベトナム、13年にはマレーシアに進出した。17年12月期の海外売上高比率は50.5%と初めて国内を上回った。

 日本の人材サービス大手は同様にアジア事業に力を入れている。テクノプロ・ホールディングスは3月中旬にシンガポールに拠点を置く同業を買収した。製造請負のnmsホールディングスは中国やマレーシアなどアジア売上高が全体の6割を超える。

 もっともアジアには地政学的なリスクがつきまとう。アウトソーシングもタイのクーデターやデモに見舞われてきた。派遣スタッフには生活が安定していない人も多く、現地での確保にはこうした社会事情が大きく響く。

 そこで目をつけたのが欧州だ。世界の人材派遣の市場は約50兆円近くに上るが、その4割を欧州が占めるとの民間推計もある。15年8月に英国やベルギーに拠点を置く企業を買収して進出した。

 三菱UFJモルガン・スタンレー証券の新井勝己氏によると「英国などの先進国では、公務員を減らすために政府系機関などの一部業務を民間に委託する流れがあり、アウトソーシングはうまく吸収している」という。欧州では未納税者への督促を受託、自治体に会計士などの専門人材も派遣している。さらに欧州では契約が3~7年程度と長い。

 このほど買収を発表したオットーHDはスタッフの採用拠点を東欧各地に持っている。三菱UFJモルガンの新井氏は、「国をまたいだ人材供給が広がることは同社にとってプラス」と評価する。

買収を発表した3月30日から4月6日までに株価は5%上昇した。
 課題は相次ぐ買収でバランスシートが膨らんでいることだ。17年12月末時点の貸借対照表上ののれん代は392億円と総資産の31%を占め、1年前に比べ約5割増えた。土井社長は「当面は借り入れをしてでも買収で成長していく」という。地域を分散させたはずのリスクが一気に顕在化しないよう、買収した企業を着実に運営していくことが高評価のかぎになる。

――――――――――――――
人材ビジネス専門コンサルティング
株式会社ソリューションアンドパートナーズ
http://www.sap-c.co.jp


sap.gif