202X年、再び人余り? AI投資で効率化進む  ロボ1000職種に

日経新聞 

 人手不足でほぼ完全雇用の状態とされる日本経済。だが企業が一斉に人工知能(AI)導入などの省力化投資に動き始めたことで次第に余剰人員が膨らみ、2020年代には完全失業率が再び上昇に転じるとの観測も出ている。人余りへの逆戻りを防ぐには、省力化で生産性が高まった社会に対応できるよう人材投資を積極化し、技能を高める環境づくりが必要だ。

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 「将来的に300億台のロボットが人間と同じように働くと、天文学的な産業になる」。日本電産の永守重信会長兼社長はロボット産業の将来性をこう語る。企業の省力化投資ブームを追い風に、自動化ロボットに周辺部品を組み合わせたシステムを外販する新事業に乗り出す。

 人口減に景気回復が重なり、働き手不足は深刻化の一途をたどる。6月の完全失業率は3%を割り込み、有効求人倍率は1.51倍に達した。一般事務職に限ると0.31倍にとどまるなど職種別にばらつきはあるが、担い手確保のカベに直面する多くの企業は、ロボットなどで労働力を置き換える動きを強めている。

 内閣府によると、機械メーカーが今年4~6月に受注した産業用ロボットの金額は1717億円と、前年同期より49%増えた。特需で生産が追い付かないところも多く、6月末の受注残高も1年前より32%増えて3843億円となった。

 IT(情報技術)投資も旺盛だ。日本政策投資銀行の調査によると、大企業の今年度の情報化投資は5582億円と、前年度比28%増を見込む。設備投資全体の8.2%を占める。

 京セラやKDDIは11月に、インターネットを使った水道の自動検針の商用利用を兵庫県姫路市の家島諸島で始める。あらゆるモノがネットにつながる「IoT」を業務の効率化に役立てる。検診が難しい地域での作業を無人化し、人手不足の解消にもつなげる狙いだ。

 企業の収益拡大と設備投資増などの好循環も始まりつつあるものの、労働の担い手がいなければ事業拡大やサービス維持に支障を来しかねない。企業がロボットやAIで徹底した効率化に取り組むのは必然の流れとはいえ、この動きが加速すると長期的には余剰人員が膨らむ可能性もある。

 日本経済新聞と英フィナンシャル・タイムズ(FT)による共同の調査研究では、人が携わる約2千種類の仕事(業務)のうち3割はロボットへの置き換えが可能という結果が出た。日本に絞ると5割強の業務を自動化できるという。

 リクルートワークス研究所(東京・中央)は機械による代替などで離職や失職が増えると完全失業率が上昇に転じ、25年に最大5.8%まで上がるとはじいた。09年7月などに記録した過去最高を上回る。

 失業者だけでなく、技術の高度化などへの対応が遅れ、企業が社内に抱える潜在的な余剰人員も増える恐れがある。同研究所の試算では25年時点で最大497万人。15年の401万人から100万人近くも増える。みずほ証券の上野泰也氏は「AIの発達が速いため、新たな雇用の受け皿が整う前にホワイトカラーを中心に余剰人員があふれ、失業率も上昇に転じる」と懸念する。

 第一生命経済研究所の永浜利広氏は「AIなどで効率化に成功した企業は社員に一段と高い水準の能力を求める。失業者が増える一方、企業の人手不足感も和らがない」とみる。勝ち組人材がはっきりしてくるに従って賃金格差も広がりやすくなり「所得の再分配機能がより重要になってくる」。経済界からも「徹底した効率化に伴う技術革新は、余剰人員を生み出すリスクもある」(丸紅の国分文也社長)といった懸念が上がる。

https://www.nikkei.com/article/DGXLASFS24H2C_V20C17A8EA4000/?dg=1&nf=1

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