シルバー人材センターの登録者、労働時間上限を緩和へ

朝日新聞

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65歳以上の労働力人口とシルバー人材センターの会員数
 シルバー人材センターを通じて働く高齢者について、週20時間までしか働けない規制を年内にも緩和する方向で、厚生労働省が検討を始めた。年々増える高齢者に働きやすい環境を整え、人手不足のなか活用したいという自治体などの要望にも応える。
 人材センターに登録する人は、65歳以上の労働力人口の1割に相当する。高齢者の大きな受け皿になっているため、これを30~35時間程度まで広げる方向だ。
 厚労省の生涯現役社会の実現に向けた検討会で、8日示された報告書の素案に盛り込まれた。65歳の定年後も働き続けたいという人は多い。あわせて、65歳以上にも雇用保険を適用することや、高齢者を雇う企業への支援の充実策も検討していく。
 人材センターで登録した会員に紹介する仕事は、駐車場の管理から介護の補助まで幅広いが、短期的で簡単な作業しかできない。現役世代の雇用に配慮し、民間企業を圧迫しないようにとの考えから、原則として労働時間は週20時間、労働日数は月10日を超えないよう、厚労省が通達に基づき指導しているためだ。
 こうした規制から利用しにくいという高齢者もいて、会員数はこのところ減少傾向だ。一方で介護や農作業などの現場は、賃金水準が低く若い人材が集まりにくい。高齢者をもっと活用したいという自治体などの要望が高まっていたが、規制が「壁」になっていた。全国の人材センターへの調査では、約6割が就労時間や業務内容の条件の緩和や撤廃を求めている。(末崎毅、平井恵美)
■自治体の要望反映
 厚生労働省がシルバー人材センターを通じた就労規制の緩和に動き出したのは、一部の自治体の強い要望があったからだ。介護や育児、農作業などでは担い手が足りず、高齢者への期待は高い。
 すでに事実上の緩和が認められた自治体がある。埼玉県草加市は、人材センターに登録した会員(約2200人)が週30時間まで働けるよう、見直しを求めた。厚労省は3月、いまのルールでも「多少の超過は運用の範囲としてありうる」と認めた。
 中村卓副市長は「規制緩和の動きは、ありがたい。元気な高齢者に『支える側』で活躍してもらうことが高齢社会を乗り越えるカギになる」と歓迎する。
 市は人材センターを活用して、軽作業のほか、介護が必要な人の買い物代行やゴミ出しの手伝い、ヘルパーの資格を持つ会員による訪問介護事業に取り組む。希望者にはもっと働いてもらいたいが時間制限があるため、月平均の報酬は4万円ほどだ。
 人材センター会員の福田常一さん(67)は、市がセンターに委託している事業で働く。認知症の男性(82)宅で、家族が留守の間に毎週2時間ほど、男性と昔話をしたり、歌ったりして過ごす。福田さんは「定年後も社会に貢献できているのがうれしい」といい、基本的に無料で利用できる男性の家族も「話し相手になってもらえるだけで本当に助かる」と話す。
 兵庫県養父(やぶ)市も、空き農地を減らすために高齢者に野菜などをつくってもらおうと、国に規制の緩和を求めてきた。
 ほかにもルールの見直しを訴える自治体はあり、厚労省も無視できなくなったといえる。
 ただ、若い世代よりも安い収入で働く高齢者が増えれば、現役世代の賃金を結果的に押し下げる懸念もある。人材センターには補助金が出ており、「民業圧迫」につながるとの見方も根強い。
 雇用政策に詳しいみずほ総合研究所の大島寧子(やすこ)・主任研究員は「高齢者により長時間働いてもらう場合は、報酬の水準が適正かどうかなど、働き手を保護する観点からの議論も必要だ」と指摘する。(野沢哲也、吉川啓一郎)
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 〈シルバー人材センター〉 退職した高齢者らを登録し、仕事を提供する公益法人で、各市町村にある。1975年に東京都江戸川区で設立され、全国に広がった。掃除や除草、家事の援助サービスといった仕事が多く、働きに応じて報酬を出す。原則60歳以上が入会できる。昨年3月末で全国に1268法人あり、会員は約73万人。1人あたりの月平均収入は約3万5千円。

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