マニュアルや手順書・記録類は確りと作成され、活動も実施されていますが、それだけで苦労してISOを取得した意味・効果が有るのでしょうか・・・とつい独り言を言ってしまう事が、審査後に多くなりました。

 このところISOの新規取得も少なくなり、定期・更新審査が多くなってきました。
 当然、既にISOを取得して数年が経っている企業さまは、マネジメントシステムを業務に活かし、ISOを取得した効果が出ている物と思い審査を担当させて頂きます。

 主任審査員に成ると、単独で企業さまへお伺いする事が多くなります。 
 ベテランの企業さまの定期・更新審査で初めてお伺いする時は、正直(9年この仕事をやっていますが)緊張します。 自社のマネジメントシステムを数年担当されていれば、いい加減な質問や指摘をすれば、大変な反撃が有るのではと心して審査に望むのですが、殆どの企業さまは初回審査の時の様に審査員に対して従順な態度で迎えて頂いています。

・これは、審査員に対抗して訳の分からない指摘をされるよりは、何も無く無事審査が終わり一年の行事が終われば良いと思われているのか・・・
・また、マニュアルや手順書が有りマネジメントシステムも構築されているが、正直何が書かれているか分からず、審査員の質問も今一つ理解出来ないが、時間が経てば何とか審査が終了して良かったと思われているのか・・・
 正直この2つの例は極端かもしれませんが、読まれて苦笑いされている担当者も居られると思います。

 全てでは有りませんが、全国の審査現場で似た様な事が起きていると思います。
これは、コンサルと審査員また、取得した企業さまの三者に問題が有ると思います。
■コンサルは、現場や企業さまの現状を十分に把握せず、規格重視や建設バージョン・製造業バージョンの雛形でマニュアル等の文書類を作成している。(このパターンが一番多いです。)
■ 審査員は規格に沿って審査を粛々と実施して行かねばなりませんが、企業は生き物で有り、同様の業種で有っても経営者の考え方や社員等の力量により全く違った企業活動があり得る筈なのに、建設業はこの要領だ、サービス業はこの要領で活動をしているのだからこの様な文書・記録が必要だと一般論で審査を行ってしまう。
 審査員の言葉は、大変大きな力を持っています。 
 「このマニュアル読み難いね---見難いね---」と言われた社長や担当者は慌てて、コンサルにクレームを出すか、自分たちで慌てて改訂しようとします。又は改訂してしまいます。 たかが一日・二日程度企業を見ただけでその企業さまのシステムを崩壊してしまうほどの発言力を持っている事を自覚すべだと思います。
 そのように慌てて改訂されたマニュアルを使用している企業さまの審査を担当すると大変です。 
 読めば読むほど、前後の文書で整合が取れない所が各所に出てきます。
 何故この様な文書にしたのかと質問しょう物なら担当者から大きな声で「この前に来た審査員が、こんな文章ではマネジメントシステムの説明に成っていない」と不適合ではないが、好ましくないと言われたので、指摘された所を自分達で改訂した。 しかし、正直何で訂正しなければ行けないのか分からなかったとも言われます。
■ 企業さまも、何故ISOを取得するか明確にされずに取得してしまっている所か沢山有ります。
・ 顧客から又は親会社から取得しないと仕事を回さないと言われたから。
・ 名刺や看板にISOのマークが入っているとカッコいいから。
・ 当社ぐらいに成るとISOぐらい持っていないとおもったから。
・ 次世代の者に技術力や業務を正しく伝承して行く為システムを導入したかった。
・ 会社の良いところを延ばし、悪いところを改善して行くシステムを導入したかった。
 下の2項目であれば本当に取得して価値の有る者に成ると思いますが、上の3項目では取得しても無駄に活動が多くなり結果としてシンドイ・要らないシステムに成ってしまいます。
 また、審査時に指摘されている事を十分に理解出来ずに指摘された通りに改善活動を行い、審査員が変わる度にマネジメントシステムを変更されている企業さま有ります。

 今一度三者が、何の為にISOが有るのか・何の為に企業はISOを取得するのかを考えて行かなければ、またまた「ISO不要論」成る物が巷に出回ってしまいます。