【問 29】 正解 2

×ア 不適切。管理組合と特定の区分所有者との間で、駐車場使用契約により駐車場を

使用させることができる(標準管理規約15条1項)。そして、使用者は管理組合に使用料

を納入しなければならないとされている(同2項)。しかし、この契約から管理組合が車両

の保管責任を負うものではない。有償であろうが無償であろうが変わらない。同条関係の

コメント⑤に、「車両の保管責任については、管理組合が負わない旨を駐車場使用契約

又は駐車場使用細則に規定することが望ましい」とあるのは、その旨示しているのである。

×イ 不適切。区分所有者がその所有する専有部分を、他の区分所有者又は第三者に

譲渡又は貸与したときは、その区分所有者の駐車場使用契約は効力を失う(標準管理

規約15条1項)。

〇ウ 適切。駐車場使用契約は、一つの独立の契約であり、使用者が契約上の駐車場

の使用料を滞納すれば、民法の原則により、催告の上駐車場使用契約を解除できる(民

法541条)。しかし、駐車場使用者が、管理費、修繕積立金等の滞納等の規約違反をし

ていても、駐車場の使用料を滞納していない以上、駐車場使用契約を解除できない。そ

こで、駐車場使用細則、駐車場使用契約等に、管理費、修繕積立金の滞納等の規約違

反の場合は、契約を解除できるか又は次回の選定時の参加資格をはく奪することがで

きる旨の規定を定めることもできる(標準管理規約15条関係コメント⑥)。いわゆる特約

である。

〇エ 適切。標準管理規約15条1項は、区分所有者のみに駐車場の使用を認めている

ので、賃借人等の占有者にも駐車場を使用させることができるようにするためには、管

理規約を改正しなければならない。

 以上より、不適切なものは、アとイの二つであり、2が正解。

【問 30】 正解 1(試験実施期間の発表は2も正解としている)

×ア 不適切。管理組合の業務に関する重要事項については、総会の議決事項とされて

いる(標準管理規約48条15号)。理事会の決議で行うことができるというのは、不適切で

ある。

〇イ 適切。理事会は、その責任と権限の範囲内において、専門委員会を設置し、特定

課題を調査又は検討させることができる(標準管理規約55条1項)。

〇ウ 適切。理事長は、未納の管理費等及び使用料の請求に関して、理事会の決議に

より、管理組合を代表して、訴訟その他法的措置を追行することができる(標準管理規

約60条3項)。

〇エ 適切。区分所有者が第6条第1項に規定する行為(建物の保存に有害な行為そ

の他建物の管理又は使用に関し区分所有者の共同の利益に反する行為)をした場合

又はその行為をするおそれがある場合には、他の区分所有者の全員又は管理組合法

人は、行為の停止等(差止請求)を請求できる。この差止請求は、裁判外(訴訟外)で

もできる。この場合、各区分所有者が請求できるのである。総会の決議や理事会の決

議は不要である。ただし、より慎重を期すために理事会の決議を得て行うことも、あえ

て不適切とは言えないであろう。しかし、この問題が「原状回復を請求するには、理事

会の決議を得なければできない」と解されるなら、不適切である。

 訴訟を提起する場合には、必ず総会の決議(普通決議)が必要である(区分所有法

57条2項)。あらかじめ規約で定めておくことはできない。だから、規約で理事会の議

決でできると規定しても、その規約は無効である。設問は、この点は明確にしていな

いので、訴訟外と考えて解答すればよい。もし、原状回復の訴訟を理事会の決議を

経て行うことができるとあれば、明らかに不適切である。

※ 試験の実施機関が、エについて、適切とも不適切ともいえるとして、1と2を正解

としている。だから、1とした人も、2とした人も正解。平成24年度も、答えが2つある

問題が2個あった。人がやることだから、ミスはつきものである。ただ、出題者が本当

に分っているのか疑わしいことがある。一度作った問題をその道の専門家に確認して

もらっているのだろうか。国家資格になっているのだから、専門家の目を通してほしい。

 出題者は、標準管理規約の第67条第3項第1号を根拠にしてこの問題を出題した

ではないかと思われる。そこには、「理事長は、理事会の決議を経て、行為の差止

め、排除又は原状回復のための必要な措置の請求に関し、管理組合を代表して、訴

訟その他法的措置を追行すること」ができると規定している。ここでは、訴訟について

も、理事会の決議を経てできると規定している。これによると、エの肢は単純に適切と

なりそうである。出題者の意図もそこにあったのではないかと思われる。

 しかし、この規約の規定は、「規約・使用細則等に違反したときの措置」についての

規定であり、区分所有法第57条でいう区分所有法第6条第1項に規定する行為(建

物の保存に有害な行為その他建物の管理又は使用に関し区分所有者の共同の利

益に反する行為)に関するものではない。

 この区分所有法第57条の場合には、訴訟を提起する場合には、必ず、総会の決議

が必要であり、規約で理事会の決議でできると規定しても、その規約は無効だと先に

述べた通りである。標準管理規約のこの規定と区分所有法の57条規定の適用範囲

を明確に区別して理解する必要がある。両者はその守備範囲が異なるのである。

 中には、区分所有法第57条の規定とこの規約の規定とは矛盾しているからこの規

約の規定は無効だという人もいる。しかし、そうではない。ちゃんと適用範囲をすみ分

けしているのである。出題者は、この規約の規定と、区分所有法57条の規定とを明

確に区別せずに出題したのではないかと疑われる。

【問 31】 正解 3

〇1 正しい。一筆の土地である甲の上に建物A(区分所有建物)、建物B(区分所有

建物)、建物C(区分所有建物)、建物D(区分所有建物)が存在する場合において、

甲が建物A、建物B、建物C、建物Dの区分所有者全員の共有に属しているときは、

「全員が共有する敷地を核にして」、団地管理組合が成立する(区分所有法65条1項)。

〇2 正しい。一筆の土地である甲の上に建物A(区分所有建物)、建物B(戸建て住

宅)、建物C(戸建て住宅)が存在する場合において、建物A、建物B、建物Cの所有

者全員が甲を共有するときは、「全員が共有する甲敷地を核にして」、団地管理組合

が成立する。戸建て住宅でも団地管理組合が成立する。

×3 誤り。四筆の土地である甲、乙、丙、丁の上に、それぞれ、建物A(戸建て住宅)、

建物B(戸建て住宅)、建物C(戸建て住宅)、集会所Dが存在する場合において、建

物A、建物B、建物C所有者全員が集会所Dを共有しているときは、「全員が共有す

る集会場Dを核にして」、団地管理組合が成立する。すべてが戸建て住宅であっても、

団地管理組合が成立することに注意。

〇4 正しい。四筆の土地である甲、乙、丙、丁の上に、それぞれ、建物A(区分所

有建物)、建物B(区分所有建物)、建物C(区分所有建物)、建物D(区分所有建物)

が存在する場合において、建物の中に存在する管理事務室が建物A、建物B、建

物C、建物Dの区分所有者全員の共有に属しているときは、「全員が共有する管理

事務室を核にして」、団地管理組合が成立する。

※ 団地は、一団地内に数棟の建物がある場合に、その団地内の土地又は附属

施設がそれらの建物の所有者の共有に属する場合に、団地全体で、その「共有

(準共有も含む)する部分の管理」を行うために認められる。したがって、「共有す

る部分以外」については、規約等で定めをしない限り(区分所有法67条、68条)、

棟単位で管理がなされる。

【問 32】 正解 3

×1 不適切。各住戸の玄関扉は、錠及び内部塗装部分は、専有部分とされるが

(標準管理規約7条2項2号)、窓枠及び窓ガラスは、専有部分に含まれないもの

とするとあり(同3号)、窓ガラスの内側部分であっても、専有部分ではなく、共用

部分である。

 バルコニー、玄関扉、窓枠、窓ガラス等は専有部分ではなく、共用部分とされて

いるが、その部屋の人に専用使用権が認められている(標準管理規約14条1項、

別表第四)。そして、共用部分については、管理組合がその責任と負担において

これを行うものとされているが(標準管理規約21条1項本文、22条1項)、これら

専用使用権が認められるものについては、その管理は、通常の使用に伴うものに

ついては、専用使用権を有する者がその責任と負担においてこれを行わなけれ

ばならないとされている(標準管理規約21条1項ただし書)。だから、バルコニー

の清掃や窓ガラスが割れた時の入れ替えは、その部屋の人ができる(標準管理

規約21条関係コメント③)。

×2 不適切。雑排水管及び汚水管については、配管継手及び立て管等専有部

分に属さない(標準管理規約8条、別表第二の2)とあり、配管の枝管は専有部分

であるが、配管継手は共用部分である。

〇3 適切。給水管については、本管から各住戸メーターを含む部分までが共用

部分である(標準管理規約8条、別表第二の2)。

×4 不適切。メーターボックス内にある給湯器ボイラーは共用部分ではなく、専有

部分である(標準管理規約8条、別表第二の1のかっこ書)。

【問 33】 正解 4

〇l 適切。管理者の権利義務については、委任に関する規定に従う(区分所有法

28条)。管理者でない管理組合の役員(一般の理事や監事)と管理組合とは、民

法の委任契約があったものと解されるから、やはり、委任の規定が適用される。

そうすると、当事者はいつでも契約を解除(辞任)できる(民法651条)。総会又は

理事会の承認は不要である。しかし、任期の満了又は辞任によって退任する役員

は、後任の役員が就任するまでの間引き続きその職務を行うことになっている(標

準管理規約36条3項)。

〇2 適切。理事長Aは、理事会の決議をもって、理事Bの理事解任を議題とする

臨時総会を招集することができる(標準管理規約48条13号、54条4号)。この場

合、辞任した理事Cも理事会の決議につき議決権を有する。Cの後任理事が未選

任の場合であるから、Cは、理事として引き続きその職務を行う義務があるからで

ある。1参照

〇3 適切。一定の要件を満たした区分所有者(組合員)は、管理者に対し、会議

の目的たる事項を示し、集会の招集を請求できる(区分所有法34条3項、標準管

理規約44条1項)。この場合、理事長は、請求した組合員全員の氏名を明らかに

しない以上、総会の招集をすることができない。法の要件を充足しているかどうか

の判断ができないからである。

×4 不適切。監事は、管理組合の業務の執行及び財産の状況について不正が

あると認めるときは、臨時総会を招集することができる(標準管理規約44条2項)。

理事Bの解任を議題とする臨時総会を招集することはできない。

【問 34】 正解 3

〇1 適切。任期の満了又は辞任によって退任する役員は、後任の役員が就任す

るまでの間引き続きその職務を行うことになっている(標準管理規約36条3項)。

問33の肢1で見た通りである。新年度開始後も、前年度理事長及び理事は、新年

度理事が選任されるまでの間、管組合の業務を行わなければならない。

〇2 適切。理事長は、毎会計年度の収支決算案を監事の会計監査を経て、通常

総会に報告し、その承認を得なければならない(標準管理規約59条)。新年度の監

事は、新年度開始後の管理組合の業務の執行及び財産の状況であれば、自分が

就任するまでの間についても監査しなければならない。

×3 不適切。理事長は、毎会計年度の収支予算案を通常総会に提出し、その承認

を得なければならない(標準管理規約58条1項)。この通常総会は、新会計年度開始

後2ヶ月以内に招集しなければならないとされている(標準管理規約42条3項)。そう

すると、新会計年度開始後、予算案の承認を得るまでに一定の期間を要する。その

期間内に支出が必要な場合もあるので、前年度の理事長が新年度開始後、予算案

承認までの期間中に支出できるものについて、標準管理規約58条3項に、明確に定

めた。それによると、第27条に定める通常の管理に要する経費のうち、経常的であり、

かつ、第1項の承認を得る前に支出することがやむを得ないと認められるもの(同項

1号)に限らず、総会の承認を得て実施している長期の施工期間を要する工事に係る

経費であって、第1項の承認を得る前に支出することがやむを得ないと認められるも

の(同項2号)もある。

〇4 適切。新年度理事長及び理事は、前年度理事会が通常総会に提出し承認され

た新年度の事業計画及び収支予算に拘束され、これを変更するには臨時総会で承

認を得なければならない(標準管理規約58条2項)。

【問 35】 正解 4

〇1 適切。各住戸内の給湯器装置への配管は、専有部分である。専有部分につい

ては本来各区分所有者の管理すべきことである。しかし、専有部分である設備のうち

共用部分と構造上一体となった部分の管理を共用部分の管理と一体として行う必要

があるときは、管理組合がこれを行うことができる(標準管理規約21条2項)。設問は

この場合に当たる。ただし、これについては、総会の決議事項とされているので(標準

管理規約48条9号)、総会の決議を経て行われる。

〇2 適切。この切替え工事の実施は、単なる修繕と異なり、大規模な工事を伴うた

め、総会の特別決議を経なければならない(区分所有法17条1項、標準管理規約

47条3項2号は敷地についても規定しているが、それは、区分所有法21条によっ

て敷地に準用されているから)。

 特別決議(4分の3とか5分の4)については、規約をもってしても変更できない

(ただし、唯一の例外は、共用部分の変更について、その区分所有者の定数(頭数)

を過半数まで減ずることができることである)。したがって、特別決議について、標準

管理規約の47条3項、4項に規定されているが、単なる確認的な規定であり、これ

らの事項については規約に定めがなくても、特別決議が必要であることに注意。

〇3 適切。共用部分の変更が専有部分の使用に特別の影響を及ぼすときは、そ

の専有部分の所有者の承諾が必要である(区分所有法17条2項、標準管理規約

47条7項)。しかし、この切替え工事の実施に伴う規約の変更については、区分所

有者全体に一律にその影響が及ぶから特定の区分所有者の承諾は不要である。

 規約には定めがないが、共用部分の管理行為(普通決議で足りる)についても、

特別の影響がある場合には、その承諾が必要であることに注意(区分所有法18条

3項)。

×4 不適切。肢1で見たように、配管は専有部分であるが、その管理を共用部分

と一体として行う必要がある場合には、管理組合が管理できることになっているが、

その費用については、「配管の清掃等」に要する費用は、管理費から支出すること

が可能であるが(標準管理規約27条3号)、「配管の取替え等」に要する費用のうち、

専有部分に係るものについては、各区分所有者が実費に応じて負担すべきもので

あるとされる(標準管理規約21条関係 コメント⑤)。各住戸内の給湯器設置の費用

については、各自が負担すべきものであり、修繕積立金から支出することはできない。

エースビジネス学院   民本廣則

http://www.acebusinessgakuin.com