朝日新聞の1月9日の朝刊の記事によると、マンション管理組合の積立金などを
着服したとして、管理組合の元理事長が業務上横領の容疑で大阪府警に逮捕され
た。

 当該マンションは大阪市中央区のマンションである。管理組合は昨年の8月に
理事長だった容疑者を解任している。そして、同9月に4,500万円を着服したと
して府警に告訴していた。

 大阪府警は、管理組合の理事長名義の銀行口座から積立金や管理費など2,000
万円を容疑者名義の口座に振り込んだ疑いで逮捕している。とりあえず、証拠の
明らかな2,000万円で逮捕したのだろう。そのうち、証拠が明らかになれば、横
領額が増えるものと思われる。

 当該マンションは、98戸で管理会社に管理を依頼している。理事長の任期は1
年であるが、容疑者は平成3年から繰り返し再任されていたという。

 管理会社がこのような横領行為を許すということは、管理会社の管理責任(民
事責任)は免れない。管理会社は出納業務についても管理を委託されていたと思
われる。

 そうすると、その業務について定期的に管理組合に報告する義務があり、その
時にその不正行為を発見してその防止措置を取る責任がある。また、横領行為が
数年にわたっている場合には、決算書等の作成において当然にその不正行為を発
見して、管理組合に報告する義務がある。

 このような横領行為があったということは、管理会社は、その業務の義務を尽
くしておらず、契約(委任契約)上の債務不履行の責任又は不法行為による責任
を負うと思われる。その責任の程度によって損害賠償の額は決まる。

 昨年の7月2日のブログ「修繕積立金の横領」で見たように、管理会社の社員や
管理会社ぐるみの横領が多発して、出納業務方式が改正された。その改正の概要
については、昨年の12月28日のブログ「マンションの出納業務方式の改正」につ
いて見た。

 今回の管理組合の理事長の横領については、今回の出納業務方式の改正とは直
接関係ない。以前から時々理事長の横領につては聞いていた。ある自主管理のマ
ンションの理事長が数千万円の横領をしたあげく破産し、結局、管理組合は一銭
の損害賠償の請求もできず、泣き寝入りしたということも聞いたことがある。

 理事長は、数人の理事の中から互選によって選任されるのが通常である。理事
を選任した他の理事は、理事長の業務について監視する義務がある。監視を怠り
理事長が不正行為を行ったときは、理事は連帯して管理組合に契約上の責任を負
う。理事と管理組合は、民法の委任契約が適用又は準用されると解されているか
らである。

 今回の事件のように管理会社に委託している場合でも、自主管理している場合
でも、理事長の不法行為については、他の理事も監視義務を怠れば責任を負うの
である。

 監事もその監査業務を怠ったものとして、管理組合に対して責任を負う。

 管理組合の役員(理事と監事)は、輪番で選ばれるのが通常であり、一々直接
不法行為をしていない役員に対して責任を問おうとしないのが、管理組合の傾向
である。明日はわが身だからである。しかし、法的には責任があることだけは肝
に銘じてほしい。

 ※エースマンション管理士ホームページhttp://acemansyonkanri.law.officelive.com/

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