2014年 2月の記事一覧

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14年02月27日 18時41分16秒
Posted by: mansyonkanrisi

【問 36】 正解 2

〇1 正しい。管理組合法人は、その名称中に管理組合法人という文字を用いなければ ならない(区分所有法48条1項)。

×2 誤り。管理組合法人は、特別決議と主たる事務所の所在地で登記をすることによっ て成立する(区分所有法47条1項)。そして、登記事項は、目的及び業務、名称、事務所 の所在場所、「代表権を有する者」の氏名、住所及び資格等である(同3項、組合等登記 令2条2項)。だから、代表権のない理事や監事は登記をする必要がない。理事であって も規約等によって代表権のない理事を定めることができる(区分所有法49条5項)。

〇3 正しい。理事は、管理組合法人を代表する(区分所有法49条3項)。その職務行為 については、代表者の行為は法人の行為とみなされるので、理事がその職務を行うにつ いて第三者に損害を加えた場合には、法人が不法行為責任を負い、その損害を賠償しな ければならない

 (問1の解説イ参照)。この点について、区分所有法47条10項は、一般社団法人及び 一般財団法人に関する法律の第78条を準用しているが、理論的に当然のことであり、 確認的に規定しているにすぎない。なお、従来は、民法に法人一般の規定が置かれて いたが、平成18の改正により、その法律が設けられたのである。

〇4 正しい。管理組合法人は、建物の全部の滅失や建物に専有部分がなくなったこと によって解散する(区分所有法55条1項1号、2号)。この場合には、建物の専有部分が なくなるので、区分所有者そのものがなくなるから、清算手続きが終了すると管理組合 も消滅する。しかし、集会の決議(特別決議である。区分所有法55条2項)で管理組合 法人が解散することもある(区分所有法55条1項3号)。この場合には、法人の解散で あり、区分所有法3条の団体としての管理組合が解散しているわけではないから、管 理組合はなお存続する。特別決議で管理組合が法人格を取得し、特別決議で法人格 を失うだけである。

【問 37】 正解 4

〇1 正当な理由が必要。専有部分の修繕工事に関し、必要な調査を行うため、理事 長が修繕箇所への立入りを請求したが、その専有部分の区分所有者がこれを拒否す る場合には、正当な理由が必要である(標準管理規約17条5項)。

〇2 正当な理由が必要。階段室をエレベーター室に改造することは、敷地及び共用部 分等の変更(その形状又は効用の著しい変更を伴わないものを除く。)に該当し(標準管 理規約47条3項2号)、特別決議が必要である。この特別決議において、専有部分の使 用に特別の影響を及ぼす場合には、その専有部分の区分所有者の承諾が必要である が、承諾を拒否するときは正当な理由が必要である(同7項)。

〇3 正当な理由が必要。敷地及び共用部分等の管理や共用部分である窓ガルス等の 改良の管理を行う者(通常管理組合である)は、管理を行うために必要な範囲内におい て、他の者が管理する専有部分又は専用使用部分への立入りを請求することができる (標準管理規約23条1項)。この立入りを請求された者は、正当な理由がなければこれ を拒否してはならない(同2項)。よって、管理組合がバルコニーの防水工事を行うため、 区分所有者の住戸に接続するバルコニーへの立入りを請求した場合に、その区分所有 者がこれを拒否する場合には、正当な理由が必要である。

×4 明文で正当な理由は必要とされていない。理事長は、議事録を保管し、組合員又 は利害関係人の書面による請求があったときは、議事録の閲覧をさせなければならな い。この場合において、閲覧につき、相当の日時、場所等を指定することができる(標 準管理規約49条3項、電磁的方法が利用可能であれば、別個に49条5項に規定され ている)。区分所有法では、議事録を保管する者は、利害関係人の請求があったときは、 「正当な理由がある場合を除いて」、議事録の閲覧を拒んではならないと規定されてい る(区分所有法42条5項、33条2項)。ということは、正当理由があれば閲覧を拒否でき るということである。利害関係人の中には当然に区分所有者も含まれる。正当な理由と いうのは、閲覧請求権の濫用と認められるような場合である。  標準管理規約49条3項は、閲覧を拒否できる場合について規定していないだけであり、

「正当理由」があるのに、拒否できないというものではない。正当な理由があれば当然に 閲覧の拒否ができる。

 設問は、組合員からの総会議事録の閲覧請求及び閲覧の日時、場所等の申出が「不 相当な場合」とあるから、閲覧を拒否できる正当理由があるので、理事長はこれを拒否 できる。

※ 設問は、本文で「正当な理由」が必要とされないものはどれかと聞いて、肢4は、正当 な理由があれば、閲覧の拒否ができるという内容になっており、実質的には正当な理由が 必要とされている。この肢4も正当な理由が必要とされているものと言ってもよい。

 この肢4を正解とするためには、明文で「正当な理由」が必要と規定されていないものは どれか、と聞いているものとして答えるしかない。

【問 38】 正解 3

×1 不適切。区分所有者の承諾を得て専有部分を占有する者(賃借人や使用借人)は、 会議の目的たる事項につき利害関係を有する場合には、集会に出席して意見を述べる ことができる(区分所有法44条1項、標準管理規約45条2項)。専有部分の賃貸借契約 において、管理費相当額の負担をすると約束した場合でも、それは、あくまでも賃貸借契 約の当事者間の約束であり、管理費については、賃借人は利害関係人ではない。

×2 不適切。管理規約の変更についての集会における決議要件を、区分所有者及び議 決権の各4分の3以上を変更することはできない(区分所有法31条1項、標準管理規約 47条3項1号)。

 問35の肢2で述べた通りである。

〇3 適切。集会の議事は、この法律又は規約に別段の定めがない限り、「区分所有者 及び議決権の各過半数」で決する(区分所有法39条1項)。これを普通決議という。この 普通決議については、規約で別段の定めができるから、「出席組合員の議決権の過半数」 に改めることができる。標準管理規約47条2項は、同じ規定を置いている。ただし、この場 合、定足数(議事を行うために必要な最小限度の出席者数をいう)についても、一定の人 数を定めておくべきである(標準管理規約47条1項)。そうしないと、大規模なマンションで も3人出席して2人が賛成して総会の決議とすることができるからである。

×4 不適切。管理者は、集会において、毎年1回一定の時期に、その事務に関する報告 をしなければならない(区分所有法43条)。それを受けて、理事長は、通常総会を、毎年 1回新会計年度開始後2ヶ月以内に招集しなければならないとされている(標準管理規約 42条3項)。総会を開かずに、書面による報告に変えることはできない。

【問 39】 正解 3

×1 誤り。構造上及び機能上、独立`性を有する建物部分(倉庫)ではあれば、その一部 に他の区分所有者らの共用に供される設備(電気、水道等のパイプが通つている)が設置 されているとしても、倉庫の排他的使用に格別の制限ないし障害を生じないときは、専有 部分として区分所有権の目的となり得る。というのが判例の趣旨である。過去に何度も出 題されている。

×2 誤り。専有部分が賃貸ざれ暴力団事務所として使用されていることを理由に、賃貸 借契約の解除及びその専有部分の引渡しを請求する訴えを提起することができる(区分 所有法60条1項)。この場合、集会において特別決議が必要であり、その決議をするに おいては、あらかじめ、弁明の機会を与えなければならないとされている(区分所有法60 条2項、58条2項、3項)。占有者(賃借人)と賃貸人を共同被告として訴えがなされるの で、双方に弁明の機会を与えなければならないのかという争いがあった。通説は違反者 である占有者(賃借人)に弁明の機会を与えれば足りると解していた。それを判例が認 めたのである。そして、原告が勝訴すると、占有者(賃借人)は原告に引渡し、その後遅 滞なく、原告から賃貸人である区分所有者に引き渡すことになっている(区分所有法60 条3項)。

〇3 正しい。管理規約の規定に基づいて、区分所有者に対し管理費の支払いが義務 づけられ、月ごとに所定の方法でそれが支払われる場合に、その管理費の債権は、基 本権たる定期金債権から派生する支分権として消滅時効にかかるとして、判例が争い に決着をつけた。つまり、民法169条に定める債権に当たるものとしている。同条は、年 又はこれより短い時期によって定めた金銭その他の物の給付を目的とする債権は、5年 間行使しないときは、消滅するとなっている。だから、月々の管理費の債権は、その月々 から、5年を経過すると時効にかかるということである。

×4 誤り。管理組合においては、訴訟をする場合、原告(あるいは被告)となることがで きるのは、以下の場合である。①組合員全員が共同原告となることができる。②管理者 を選任すば、管理者も原告となることができる(区分所有法26条4項)。また、③差止請 求等においては、管理者又は集会において指定された区分所有者も原告となることがで きる(区分所有法57条3項、58条4項、59条2項、60条2項)。④法人化されているとき は、法人も原告適格が認められる(区分所法47条8項)。このように、原告(あるいは被 告)となることができることを訴訟追行権という。

 法人格を取得していないが、団体としてまとまりのある団体を権利能力なき社団という。

団体としての組織を備え、多数決の原則が行われ、構成員が変更しても団体が存続し、 代表者・総会の運営・財産の管理方法が確定している、といった要件を満たしている場 合に認められる。マンション管理組合、町内会、同窓会、政党などである。

 権利能力なき社団であるマンション管理組合について原告適格が認められるかどう かについては、区分所有法上は、むしろ認めていないのではないかと思われていたの ですが、平成23年2月15日の判決(管理組合が区分所有者に対する損害賠償の請求 事件)で原告適格を認めた。原審の東京高等裁判所は、原告適格を否定したのですが、 最高裁判所第三小法廷は、原判決を破棄して、本件を原審に差し戻したのである。

14年02月26日 14時58分48秒
Posted by: mansyonkanrisi

【問 29】 正解 2

×ア 不適切。管理組合と特定の区分所有者との間で、駐車場使用契約により駐車場を

使用させることができる(標準管理規約15条1項)。そして、使用者は管理組合に使用料

を納入しなければならないとされている(同2項)。しかし、この契約から管理組合が車両

の保管責任を負うものではない。有償であろうが無償であろうが変わらない。同条関係の

コメント⑤に、「車両の保管責任については、管理組合が負わない旨を駐車場使用契約

又は駐車場使用細則に規定することが望ましい」とあるのは、その旨示しているのである。

×イ 不適切。区分所有者がその所有する専有部分を、他の区分所有者又は第三者に

譲渡又は貸与したときは、その区分所有者の駐車場使用契約は効力を失う(標準管理

規約15条1項)。

〇ウ 適切。駐車場使用契約は、一つの独立の契約であり、使用者が契約上の駐車場

の使用料を滞納すれば、民法の原則により、催告の上駐車場使用契約を解除できる(民

法541条)。しかし、駐車場使用者が、管理費、修繕積立金等の滞納等の規約違反をし

ていても、駐車場の使用料を滞納していない以上、駐車場使用契約を解除できない。そ

こで、駐車場使用細則、駐車場使用契約等に、管理費、修繕積立金の滞納等の規約違

反の場合は、契約を解除できるか又は次回の選定時の参加資格をはく奪することがで

きる旨の規定を定めることもできる(標準管理規約15条関係コメント⑥)。いわゆる特約

である。

〇エ 適切。標準管理規約15条1項は、区分所有者のみに駐車場の使用を認めている

ので、賃借人等の占有者にも駐車場を使用させることができるようにするためには、管

理規約を改正しなければならない。

 以上より、不適切なものは、アとイの二つであり、2が正解。

【問 30】 正解 1(試験実施期間の発表は2も正解としている)

×ア 不適切。管理組合の業務に関する重要事項については、総会の議決事項とされて

いる(標準管理規約48条15号)。理事会の決議で行うことができるというのは、不適切で

ある。

〇イ 適切。理事会は、その責任と権限の範囲内において、専門委員会を設置し、特定

課題を調査又は検討させることができる(標準管理規約55条1項)。

〇ウ 適切。理事長は、未納の管理費等及び使用料の請求に関して、理事会の決議に

より、管理組合を代表して、訴訟その他法的措置を追行することができる(標準管理規

約60条3項)。

〇エ 適切。区分所有者が第6条第1項に規定する行為(建物の保存に有害な行為そ

の他建物の管理又は使用に関し区分所有者の共同の利益に反する行為)をした場合

又はその行為をするおそれがある場合には、他の区分所有者の全員又は管理組合法

人は、行為の停止等(差止請求)を請求できる。この差止請求は、裁判外(訴訟外)で

もできる。この場合、各区分所有者が請求できるのである。総会の決議や理事会の決

議は不要である。ただし、より慎重を期すために理事会の決議を得て行うことも、あえ

て不適切とは言えないであろう。しかし、この問題が「原状回復を請求するには、理事

会の決議を得なければできない」と解されるなら、不適切である。

 訴訟を提起する場合には、必ず総会の決議(普通決議)が必要である(区分所有法

57条2項)。あらかじめ規約で定めておくことはできない。だから、規約で理事会の議

決でできると規定しても、その規約は無効である。設問は、この点は明確にしていな

いので、訴訟外と考えて解答すればよい。もし、原状回復の訴訟を理事会の決議を

経て行うことができるとあれば、明らかに不適切である。

※ 試験の実施機関が、エについて、適切とも不適切ともいえるとして、1と2を正解

としている。だから、1とした人も、2とした人も正解。平成24年度も、答えが2つある

問題が2個あった。人がやることだから、ミスはつきものである。ただ、出題者が本当

に分っているのか疑わしいことがある。一度作った問題をその道の専門家に確認して

もらっているのだろうか。国家資格になっているのだから、専門家の目を通してほしい。

 出題者は、標準管理規約の第67条第3項第1号を根拠にしてこの問題を出題した

ではないかと思われる。そこには、「理事長は、理事会の決議を経て、行為の差止

め、排除又は原状回復のための必要な措置の請求に関し、管理組合を代表して、訴

訟その他法的措置を追行すること」ができると規定している。ここでは、訴訟について

も、理事会の決議を経てできると規定している。これによると、エの肢は単純に適切と

なりそうである。出題者の意図もそこにあったのではないかと思われる。

 しかし、この規約の規定は、「規約・使用細則等に違反したときの措置」についての

規定であり、区分所有法第57条でいう区分所有法第6条第1項に規定する行為(建

物の保存に有害な行為その他建物の管理又は使用に関し区分所有者の共同の利

益に反する行為)に関するものではない。

 この区分所有法第57条の場合には、訴訟を提起する場合には、必ず、総会の決議

が必要であり、規約で理事会の決議でできると規定しても、その規約は無効だと先に

述べた通りである。標準管理規約のこの規定と区分所有法の57条規定の適用範囲

を明確に区別して理解する必要がある。両者はその守備範囲が異なるのである。

 中には、区分所有法第57条の規定とこの規約の規定とは矛盾しているからこの規

約の規定は無効だという人もいる。しかし、そうではない。ちゃんと適用範囲をすみ分

けしているのである。出題者は、この規約の規定と、区分所有法57条の規定とを明

確に区別せずに出題したのではないかと疑われる。

【問 31】 正解 3

〇1 正しい。一筆の土地である甲の上に建物A(区分所有建物)、建物B(区分所有

建物)、建物C(区分所有建物)、建物D(区分所有建物)が存在する場合において、

甲が建物A、建物B、建物C、建物Dの区分所有者全員の共有に属しているときは、

「全員が共有する敷地を核にして」、団地管理組合が成立する(区分所有法65条1項)。

〇2 正しい。一筆の土地である甲の上に建物A(区分所有建物)、建物B(戸建て住

宅)、建物C(戸建て住宅)が存在する場合において、建物A、建物B、建物Cの所有

者全員が甲を共有するときは、「全員が共有する甲敷地を核にして」、団地管理組合

が成立する。戸建て住宅でも団地管理組合が成立する。

×3 誤り。四筆の土地である甲、乙、丙、丁の上に、それぞれ、建物A(戸建て住宅)、

建物B(戸建て住宅)、建物C(戸建て住宅)、集会所Dが存在する場合において、建

物A、建物B、建物C所有者全員が集会所Dを共有しているときは、「全員が共有す

る集会場Dを核にして」、団地管理組合が成立する。すべてが戸建て住宅であっても、

団地管理組合が成立することに注意。

〇4 正しい。四筆の土地である甲、乙、丙、丁の上に、それぞれ、建物A(区分所

有建物)、建物B(区分所有建物)、建物C(区分所有建物)、建物D(区分所有建物)

が存在する場合において、建物の中に存在する管理事務室が建物A、建物B、建

物C、建物Dの区分所有者全員の共有に属しているときは、「全員が共有する管理

事務室を核にして」、団地管理組合が成立する。

※ 団地は、一団地内に数棟の建物がある場合に、その団地内の土地又は附属

施設がそれらの建物の所有者の共有に属する場合に、団地全体で、その「共有

(準共有も含む)する部分の管理」を行うために認められる。したがって、「共有す

る部分以外」については、規約等で定めをしない限り(区分所有法67条、68条)、

棟単位で管理がなされる。

【問 32】 正解 3

×1 不適切。各住戸の玄関扉は、錠及び内部塗装部分は、専有部分とされるが

(標準管理規約7条2項2号)、窓枠及び窓ガラスは、専有部分に含まれないもの

とするとあり(同3号)、窓ガラスの内側部分であっても、専有部分ではなく、共用

部分である。

 バルコニー、玄関扉、窓枠、窓ガラス等は専有部分ではなく、共用部分とされて

いるが、その部屋の人に専用使用権が認められている(標準管理規約14条1項、

別表第四)。そして、共用部分については、管理組合がその責任と負担において

これを行うものとされているが(標準管理規約21条1項本文、22条1項)、これら

専用使用権が認められるものについては、その管理は、通常の使用に伴うものに

ついては、専用使用権を有する者がその責任と負担においてこれを行わなけれ

ばならないとされている(標準管理規約21条1項ただし書)。だから、バルコニー

の清掃や窓ガラスが割れた時の入れ替えは、その部屋の人ができる(標準管理

規約21条関係コメント③)。

×2 不適切。雑排水管及び汚水管については、配管継手及び立て管等専有部

分に属さない(標準管理規約8条、別表第二の2)とあり、配管の枝管は専有部分

であるが、配管継手は共用部分である。

〇3 適切。給水管については、本管から各住戸メーターを含む部分までが共用

部分である(標準管理規約8条、別表第二の2)。

×4 不適切。メーターボックス内にある給湯器ボイラーは共用部分ではなく、専有

部分である(標準管理規約8条、別表第二の1のかっこ書)。

【問 33】 正解 4

〇l 適切。管理者の権利義務については、委任に関する規定に従う(区分所有法

28条)。管理者でない管理組合の役員(一般の理事や監事)と管理組合とは、民

法の委任契約があったものと解されるから、やはり、委任の規定が適用される。

そうすると、当事者はいつでも契約を解除(辞任)できる(民法651条)。総会又は

理事会の承認は不要である。しかし、任期の満了又は辞任によって退任する役員

は、後任の役員が就任するまでの間引き続きその職務を行うことになっている(標

準管理規約36条3項)。

〇2 適切。理事長Aは、理事会の決議をもって、理事Bの理事解任を議題とする

臨時総会を招集することができる(標準管理規約48条13号、54条4号)。この場

合、辞任した理事Cも理事会の決議につき議決権を有する。Cの後任理事が未選

任の場合であるから、Cは、理事として引き続きその職務を行う義務があるからで

ある。1参照

〇3 適切。一定の要件を満たした区分所有者(組合員)は、管理者に対し、会議

の目的たる事項を示し、集会の招集を請求できる(区分所有法34条3項、標準管

理規約44条1項)。この場合、理事長は、請求した組合員全員の氏名を明らかに

しない以上、総会の招集をすることができない。法の要件を充足しているかどうか

の判断ができないからである。

×4 不適切。監事は、管理組合の業務の執行及び財産の状況について不正が

あると認めるときは、臨時総会を招集することができる(標準管理規約44条2項)。

理事Bの解任を議題とする臨時総会を招集することはできない。

【問 34】 正解 3

〇1 適切。任期の満了又は辞任によって退任する役員は、後任の役員が就任す

るまでの間引き続きその職務を行うことになっている(標準管理規約36条3項)。

問33の肢1で見た通りである。新年度開始後も、前年度理事長及び理事は、新年

度理事が選任されるまでの間、管組合の業務を行わなければならない。

〇2 適切。理事長は、毎会計年度の収支決算案を監事の会計監査を経て、通常

総会に報告し、その承認を得なければならない(標準管理規約59条)。新年度の監

事は、新年度開始後の管理組合の業務の執行及び財産の状況であれば、自分が

就任するまでの間についても監査しなければならない。

×3 不適切。理事長は、毎会計年度の収支予算案を通常総会に提出し、その承認

を得なければならない(標準管理規約58条1項)。この通常総会は、新会計年度開始

後2ヶ月以内に招集しなければならないとされている(標準管理規約42条3項)。そう

すると、新会計年度開始後、予算案の承認を得るまでに一定の期間を要する。その

期間内に支出が必要な場合もあるので、前年度の理事長が新年度開始後、予算案

承認までの期間中に支出できるものについて、標準管理規約58条3項に、明確に定

めた。それによると、第27条に定める通常の管理に要する経費のうち、経常的であり、

かつ、第1項の承認を得る前に支出することがやむを得ないと認められるもの(同項

1号)に限らず、総会の承認を得て実施している長期の施工期間を要する工事に係る

経費であって、第1項の承認を得る前に支出することがやむを得ないと認められるも

の(同項2号)もある。

〇4 適切。新年度理事長及び理事は、前年度理事会が通常総会に提出し承認され

た新年度の事業計画及び収支予算に拘束され、これを変更するには臨時総会で承

認を得なければならない(標準管理規約58条2項)。

【問 35】 正解 4

〇1 適切。各住戸内の給湯器装置への配管は、専有部分である。専有部分につい

ては本来各区分所有者の管理すべきことである。しかし、専有部分である設備のうち

共用部分と構造上一体となった部分の管理を共用部分の管理と一体として行う必要

があるときは、管理組合がこれを行うことができる(標準管理規約21条2項)。設問は

この場合に当たる。ただし、これについては、総会の決議事項とされているので(標準

管理規約48条9号)、総会の決議を経て行われる。

〇2 適切。この切替え工事の実施は、単なる修繕と異なり、大規模な工事を伴うた

め、総会の特別決議を経なければならない(区分所有法17条1項、標準管理規約

47条3項2号は敷地についても規定しているが、それは、区分所有法21条によっ

て敷地に準用されているから)。

 特別決議(4分の3とか5分の4)については、規約をもってしても変更できない

(ただし、唯一の例外は、共用部分の変更について、その区分所有者の定数(頭数)

を過半数まで減ずることができることである)。したがって、特別決議について、標準

管理規約の47条3項、4項に規定されているが、単なる確認的な規定であり、これ

らの事項については規約に定めがなくても、特別決議が必要であることに注意。

〇3 適切。共用部分の変更が専有部分の使用に特別の影響を及ぼすときは、そ

の専有部分の所有者の承諾が必要である(区分所有法17条2項、標準管理規約

47条7項)。しかし、この切替え工事の実施に伴う規約の変更については、区分所

有者全体に一律にその影響が及ぶから特定の区分所有者の承諾は不要である。

 規約には定めがないが、共用部分の管理行為(普通決議で足りる)についても、

特別の影響がある場合には、その承諾が必要であることに注意(区分所有法18条

3項)。

×4 不適切。肢1で見たように、配管は専有部分であるが、その管理を共用部分

と一体として行う必要がある場合には、管理組合が管理できることになっているが、

その費用については、「配管の清掃等」に要する費用は、管理費から支出すること

が可能であるが(標準管理規約27条3号)、「配管の取替え等」に要する費用のうち、

専有部分に係るものについては、各区分所有者が実費に応じて負担すべきもので

あるとされる(標準管理規約21条関係 コメント⑤)。各住戸内の給湯器設置の費用

については、各自が負担すべきものであり、修繕積立金から支出することはできない。

エースビジネス学院   民本廣則

http://www.acebusinessgakuin.com

14年02月25日 12時22分14秒
Posted by: mansyonkanrisi

【問 17】 正解 2

〇1 正しい。主要構造部とは、壁、柱、床、はり、屋根又は階段をいい、建築物の構造

上重要でない間仕切壁、間柱、附け柱、揚げ床、「最下階の床」、廻り舞台の床、小ばり、

ひさし、局部的な小階段、屋外階段その他これらに類する建築物の部分を除くものとす

る(建基法2条5号)。主要構造部に、最下階の床は含まれない。

×2 誤り。構造耐力上主要な部分とは、基礎、基礎ぐい、壁、柱、小屋組、土台、斜材

(筋かい、方づえ、火打材その他これらに類するものをいう)、床版、「屋根版」又は横架

材(はり、けたその他これらに類するものをいう)で、建築物の自重若しくは積載荷重、

積雪荷重、風圧、土圧若しくは水圧又は地震その他の震動若しくは衝撃を支えるものを

いう(建基法施行令1条

3号)。構造耐力上主要な部分に、屋根版は含まれる。

〇3 正しい。耐水材料とは、「れんが」、石、人造石、コンクリート、アスファルト、陶磁器、

ガラスその他これらに類する耐水性の建築材料をいう(建基法施行令1条4号)。耐水材

料に、れんがは含まれる。

〇4 正しい。地階とは、床が地盤面下にある階で、床面から地盤面までの高さがその階

の天井の高さの3分の1以上のものをいう(建基法施行令1条2号)。

【問 18】 正解 3

〇1 正しい。自動試験機能とは、住宅用防災警報器及び住宅用防災報知設備に係る機

能が適正に維持されていることを、自動的に確認することができる装置による試験機能を

いう(消防法9条の2、消防法施行令5条の6、住宅用防災警報器及び住宅用防災報知設

備に係る技術上の規格を定める省令2条5号)。

〇2 正しい。住宅用防災警報器のうちスイッチの操作により火災警報を停止することので

きるものにあっては、当該スイッチの操作により火災警報を停止したとき、15分以内に自動

的に適正な監視状態に復旧するものでなければならない(住宅用防災警報器及び住宅用

防災報知設備に係る技術上の規格を定める省令3条12号)。

×3 誤り。住宅用防災警報器及び住宅用防災報知設備の感知器は、天井にあっては壁又

ははりから0.6m以上離れた屋内に面する部分、壁にあっては天井から下方0.15m以上

0.5m以内の位置にある屋内に面する部分で、かつ、換気口等の空気吹出し口から「1.0m

以上」ではなく、1.5m以上離れた位置に設置しなければならない(住宅用防災機器の設置

及び維持に関する条例の制定に関する基準を定める省令7条2号、3号)。

〇4 正しい。共同住宅用スプリンクラー設備、共同住宅用自動火災報知設備又は住戸用

自動火災報知設備を、それぞれ省令に定める技術上の基準に従い設置した場合には、住

宅用防災警報器又は住宅用防災報知設備の設置は免除される(施行令5条の7第1項3号、

住宅用防災機器の設置及び維持に関する条例の制定に関する基準を定める省令6条)。

【問 19】 正解 2

〇1 適切。伸頂通気管とは、最上部の排水横枝管が排水立て管に接続した点よりも更に

上方へ、その排水立て管を立ち上げて、これを通気管に使用する部分をいう。

×2 不適切。「通気弁は排水立て管、排水横枝管などで、負圧が発生すると弁が開き、大

気を吸込んで排水管内の圧力を均等化してトラップの封水を保護する。平常時は弁閉し、

悪臭の漏れを防ぐ。」と説明されている。排水通気管内に生じる「正圧及び負圧」を緩和

る弁というのは、誤り。排水通気管内に生じる負圧を緩和する。

〇3 適切。排水口空間とは、間接排水管の菅端と、一般の排水系統に直結している水受

け容器又は排水器具のあふれ縁との間の垂直距離をいう。

〇4 適切。封水強度とはく排水管内に正圧又は負圧が生じたときの排水トラップの封水

保持能力をいう。

【問 20】 正解 4

〇1 正しい。居室には換気のための窓その他の開口部を設け、その換気に有効な部分

面積は、その居室の床面積に対して、20分の1以上としなければならない。ただし、政

令で定める技術的基準に従って換気設備を設けた場合においては、この限りでない(建

基法28条2項)。

〇2 正しい。換気設備を設けるべき調理室等に煙突、排気フードなどを設けず、排気口

は排気筒に換気扇を設ける場合にあっては、その有効換気量を、(燃料の単位燃焼量

当たりの理論廃ガス量)×(火を使用する設備又は器具の実況に応じた燃料消費量)の40

倍以上とすることになっている(建基法28条3項、施行令20条の3第2項1号イ4号、建設

省告示1826第三2号)。

〇3 正しい。機械換気設備の構造は、換気上有効な給気機及び排気機、換気上有効な

気機及び排気口又は換気上有効な給気口及び排気機を有すること(建基法28条3項、

施行令29条の2の6第2項1号)。

×4 誤り。火を使用する設備又は器具の通常の使用状態において、異常な燃焼が生じ

ないよう当該室内の酸素の含有率をおおむね「15.0%」ではなく、20.5%以上に保つ換

気ができるものとして、国土交通大臣の認定を受けたものとすることとなっている(建基法

28条3項、施行令20条の3第2項1号ロ)。

【問 21】 正解 4

×1 誤り。建築物の定期調査及び昇降機以外の建築設備の定期調査は、一級建築士若

くは二級建築士の他、国土交通大臣が定める資格を有する者も行うことができる(建基

12条1項)。

×2 誤り。建築基準法第12条第1項に掲げる特殊建築物の定期調査は、「5年に1回」で

はなく、3年に1回実施しなければならないとされている(建基法施行規則5条1項では、報

告の時期は、建築物の用途、構造、延べ面積等に応じて、おおむね6月から3年までの間

隔をおいて特定行政庁が定める時期となっているが、現在は3年ごとに実施されている。)。

×3 誤り。建築基準法第12条第3項に掲げる昇降機の定期検査は、「3年に1回」ではな

く、1年に1回実施しなければならない(建基法施行規則6条1項では、原則として、報告の

期は、昇降機等の種類、用途、構造等に応じて、おおむね6月から1年までの間隔をお

いて特定行政庁が定める時期となっているが、現在は1年ごとに実施されている。)。

〇4 正しい。消防用設備等の点検の結果についての報告は、3年に1回実施しなければ

らない(消防法17条の3の3、施行規則31条の6第3項2号)。6ヶ月に1回機器点検を1

年に1回総合点検を実施し、3年に1回報告することになっている。

【問 22】 正解 2

〇1 適切。音の伝わり方には、固体伝搬音と空気伝搬音がある。

×2 不適切。床衝撃音の遮音性能を評価する衝撃源として、重量衝撃源と軽量衝撃源が

り、子供の椅子からの飛び降りは、「軽量衝撃源」ではなく、重量衝撃源に分類される。

〇3 適切。界壁の遮音等級D値(Differrence of Sound Level 音圧レベル差)は、そ

値が大きいほど遮音`性能が高い。

〇4 適切。床衝撃音の遮音等級L値(floor impact sound Level)は、その値が大きい

ど遮音性能が低い。

【問 23】 正解 1

×1 不適切。単相3線式とは、交流の電力を3本の電線で供給する。配線は、電圧線が2

1本の中性線の計3本で構成される。電圧線ともう一本の電圧線を結ぶと200ボルト

の電が得られるが、電圧線と中性線を結ぶと100ボルトの電圧しか得られないので、

切でない。

〇2 適切。単相3線式で引込んでいる住戸においては、漏電遮断器は中性線欠相保護

能付のものとするのが望ましい。

〇3 適切。エアコン用のコンセントは、専用回路とするのが望ましい。エアコンや電子レ

ンジ、電気の消費量が大きいため、一緒に使用するとブレーカーが落ちることがあるの

で、専用回路とするのが望ましい。

〇4 適切。3路スイッチ(異なった2箇所から1つの照明器具などをオン・オフできるス

イッチのこと)等を使用することにより、複数の箇所から照明器具のスイッチのオン、オ

フが可能となる。

【問 24】 正解 1

この法律は、火災を予防し、警戒し及び(ア 鎮圧)し、国民の生命、身体及び財産を火

災から保護するとともに、火災又は(イ 地震)等の災害による被害を軽減するほか、災

害等によ傷病者の搬送を適切に行い、もって安寧秩序を保持し、(ウ 社会公共の福

祉の増進)に資することを目的とする(消防法1条)。

 以上より1が正解。

【問 25】 正解 4

×1 不適切。コンクリートの計画供用期間とは、建築物の計画時又は設計時に、建築主

は設計者が設定する、建築物の予定供用期間であり、①短期、②標準、③長期、④超

長期の4つの級が設定されている。

×2 不適切。空気量とは、「硬化後」ではなく、硬化前のフレッシュ(生)コンクリートに含

まれる空気の容積のコンクリート容積に対する百分率をいう。ただし、骨材内部の空気は

まない。

×3 不適切。運搬とは、フレッシュコンクリートを、製造工場から工場現場の荷卸地点ま

ぶことをいう。

〇4 適切。品質基準強度とは、構造物及び部材の要求品質を得るために必要とされる

コンクリートの圧縮強度で、通常、設計基準強度と耐久設計基準強度を確保するために、

コンクリートの品質の基準として定めた強度をいう。そして、設計基準強度とは、構造物

構造計算において基準としたコンクリートの圧縮強度のことであり、耐久設計基準強

度とは、構造物び部材の供用期間に応ずる耐久性を確保するために必要とされる圧

縮強度をいう。

【問 26】 正解 1

×1 含まれない。機械式駐車場の劣化及び損傷の状況は含まれない。これは建築基

準法調査項目になっていない。ただし、駐車場法は適用される。

〇2 含まれる。擁壁の劣化及び損傷の状況は含まれる(建基法12条1項、施行規則2

項、3項、別表)

〇3 含まれる。サッシ等の劣化及び損傷の状況は含まれる((建基法12条1項、施行規

2項、3項、別表)

〇4 含まれる。避雷針、避雷導線等の劣化及び損傷の状況は含まれる((建基法12条1

項、施行規則2項、3項、別表)

【問 27】 正解 4

〇1 適切。既存マンションの長期修繕計画は、計画期間が25年程度以上であることが

必要である。なお、新築時においては、30年程度にすると、修繕のために必要な工事を

ほぼ網羅できる(標準管理規約32条関係 ②の1)。

〇2 適切。計画修繕の対象となる工事として、外壁補修、屋上防水、給排水管取替え、

窓及玄関扉等の開口部の改良等が掲げられ、各部位ごとに修繕周期、工事金額等

が定められていることが必要である(同 ②の2)。

〇3 適切。長期修繕計画の作成又は変更及び修繕工事の実施の前提として、劣化診

断(建物診断)を管理組合として併せて行うことが必要である(同 ③)。

×4 不適切。長期修繕計画の内容については、定期的な(おおむね「10年」ではなく、5

年程度ごとに)見直しをすることが必要である(同 ②の3)。

【問 28】 正解 4

×1 不適切。内部の保守点検を容易かつ安全に行うことができる位置に、次に定める構

たマンホールを設けること。ただし、給水タンク等の天井が蓋を兼ねる場合におい

ては、の限りでない。直径60cm以上の円が内接することができるものとすること。ただ

し、外部から内部の保守点検を容易かつ安全に行うことができる小規模な給水タンク等に

あっては、この限りでない(建基法施行令129条の2の5第2項6号、建設省告示1597号

第1二イ(4)(ろ))。直径「50cm」ではなく、60cm以上である。

×2 不適切。ウォーターハンマーを防止する方法として、減圧弁を設置する方法もあるが、

水栓器具にまで、減圧弁を設置するのは、適切でない。

×3 不適切。飲料水の配管設備(これと給水系統を同じくする配管設備を含む。この号か

ら第三号までにおいて同じ。)とその他の配管設備とは、直接連結させないこと(建基法施

行令129条の2の5第2項1号)。逆流を防止する装置などを利用しても、直接連結するこ

はできない。

〇4 適切。給水立て主管から各階への分岐管には、分岐点に近接した部分で、かつ、

作を容易にできる部分に止水弁を設けなければならない(建設省告示1597号 第1

一ロ)。

14年02月20日 17時36分52秒
Posted by: mansyonkanrisi

【問 36】 正解 3

×1 違反する。A社は、宅地の売買の媒介に際して、売買契約締結の前に、私道

の負担に関する事項について重要事項として説明する義務がある(業法35条1項

3号)。

×2 違反する。A社は、契約が成立する前に、営業保証金を供託している供託所

及びその所在地を説明するようにしなければならない(業法35条の2第1号)。

○3 違反しない。37条書面に記名押印をした取引主任者がその書面を交付する

必要はなく、取引主任者ではない従業員に37条書面を交付させても違反しない。

×4 違反する。宅地の売買の媒介に際し、当該売買契約に瑕疵担保に関する特

約があった場合、宅建業者間の取引であっても、当該特約の内容について37条

書面へ記載しなければならない(業法37条1項11号)。

【問 37】 正解 1

 5,100万円×3%+6万円=159万円。媒介の場合には、これに消費税5%を

かけると、166万9,500円となる。そして、代理の場合には、159万円×2×消費

税5%=3,339,000である。

 また、A社C社の合計額は、159万円×2にそれぞれの消費税を加えた額を超

えてならない。

×ア 違反する。A社C社とも、報酬の限度額を超えるし、両社の合計額も超える。

×イ 違反する。A社C社の合計額が限度額を超えている。

○ウ 違反しない。A社はBから1,660,000円の報酬を受領し、C社はDから

1,669,500円を報酬として受領しているので、限度額を超えていない。Dの特別

の依頼に基づき行った遠隔地への現地調査に要した特別の費用50,000円につ

いて、報酬と別個に受領できる。

 以上より、違反しないものは、ウの一つであり、1が正解。

【問 38】 正解 2

×ア 誤り。業者が売主で、買主が業者でない場合、瑕疵担保責任について民法

の規定より買主に不利な特約は無効となるが、例外的に売主が瑕疵担保責任を

負う期間を物件の引渡しから2年以上とする特約は有効である(業法40条1項、

2項)。したがって、設問で、瑕疵内容を限定せず、「引渡しから2年以内に発見さ

れた瑕疵についてのみ責任を負うという」とい特約があった場合には、引渡しから

2年以内に瑕疵担保の責任を追求しなければならず、引渡しから2年を経過する

と瑕疵担保責任は負わない趣旨と解すべきであるから、特約は有効と解すべき

である。しかし、建物の構造体力上主要な部分の瑕疵についてのみ責任を負う

というような限定は買主に不利であり、この特約は無効である。

○イ 正しい。業者が売主で、買主が業者でない場合、当事者の債務の不履行を

理由とする契の解除に伴う損害賠償の予定額と違約金の合計額は、代金の2割

を超えて定めることができない(業法38条1項)。設問は、代金3,500万円である

から、700万円とする特約を定めることができる。

×ウ 誤り。業者が売主で、買主が業者でない場合、代金の2割を超える手付けを

受領することはできない(業法39条1項)。そして、その手付けがいかなる性質のも

のであっても、当事者の一方が契約の履行に着手するまでは、買主は手付を放棄

して、売主はその倍額を償還して、契約の解除ができる(同2項)。そして、この2項

の規定に反する特約で、買主不利な特約は無効となる(同3項)。以上より、売主は

買主に受領済みの手付金及び中間金の倍額を支払って解除できるという特約は有

効であるが、買主は手付金の放棄のみで解除できるのに、さらに中間金も放棄して

契約を解除できる旨の特約は、買主に不利な特約であり、無効である。

 以上より、誤っているものは、アとウの二つであり、2が正解。

【問 39】 正解 1

○1 正しい。保証協会は、社員の取り扱った宅建業に係る取引に関する苦情につい

て、宅建業者の相手方等からの解決の申出及びその解決の結果を社員に周知させ

なければならない(業法64条の5第1項、4項)。苦情の解決は必須業務である。

×2 誤り。宅建業者が保証協会に加入した場合、「宅建業者ではなく」、保証協会は

直ちに、その旨を社員である宅建業者が免許を受けた国土交通大臣又は都道府県

知事に報告しなければならない(業法64条の4第2項)。

×3 誤り。保証協会は、弁済業務保証金の還付があったときは、当該還付に係る社

員又は社員であった者に対し、当該還付額に相当する額の還付充当金を、保証協会

に納付するように通知しなければならない(業法64条の10第1項)。「供託すべきこと

を通知」するものではない。

×4 誤り。宅建業者で保証協会に加入しようとする者は、「その加入の日から2週間

以内に」、ではなく、加入しようとする日までに、弁済業務保証金分担金を保証協会に

納付しなければならない(業法64条の9第1項)。

【問 40】 正解 3

×1 誤り。業者が売主で、買主が業者でない場合、未完成物件の売買契約において

は、代金の5%又は1,000万円を超える手付金等を受領する場合、手付金等の保全

措置を講じなければならない(業法41条1項)。4,000万円の代金に対して、300万円

の手付金を受領する場合、保全措置が必要である。しかし、未完成物件の保全措置は

については、銀行等による連帯保証と保険事業者による保証保険しか認められていな

い。指定保管機関による保管による保全措置は、完成物件についてのみ認められてい

るのである。

×2 誤り。保全措置の義務を負うのは、売主である宅建業者であり、販売代理の依頼

受けた業者や媒介の依頼を受けた業者には、保全措置の義務はない(業法41条1項)。

○3 正しい。業者が売主で、買主が業者でない場合に保全措置の義務が生ずるのであ

り、業者間の売買においては、手付金等の保全措置の義務はない(業法78条2項)。

×4 誤り。未完成物件の売買契約において、代金4,000万円である場合には、200万

円を超えれば保全措置が必要である。100万円の手付金を受領した段階では保全措

置は必要でないが、200万円の中間金を受領した段階で、その前の手付金と合わせて

5%を超えることになるので、保全措置が必要である。この場合、前に受け取った手付

金と中間金の合計300万円について保全措置が必要である。

【問 41】 正解 2

×1 誤り。宅建業者は、その事務所ごとにその業務に関する帳簿を備えなければな

らない(業法49条)。当該帳簿の記載事項を事務所のパソコンのハードディスクに記録

し、必要に応じ当該事務所においてパソコンやプリンターを用いて紙面に印刷すること

が可能なときは、当該帳簿の記載に代えることができる(規則18条2項)。

○2 宅建業者は、事務所に宅地建物取引業者免許証を掲げる義務はない。しかし、国

土交通省令で定める標識は、事務所ごとに(主たる事務所とすべての従たる事務所に)

掲げなければならない(業法50条1項)。もちろん、それ以外のところにも掲げる必要が

ある。

×3 誤り。宅建業者は、その事務所ごとにその業務に関する帳簿を備えなければなら

ない。この点は1で述べた通りである。しかし、宅建業に関し取引のあった場合、「その

月の翌月1日までに、」ではなく、取引のあったつど、その年月日等一定の事項を記載し

なければならない(業法49条)。

×4 誤り。宅建業者は、その業務に従事させる者に、従業者証明書を携帯させなけれ

ばならない(業法48条1項)。宅地建物取引主任者証と従業者証明書は別物であり、取

引主任者証をもって代用することはできない。

【問 42】 正解 2

×1 誤り。取引主任者が、他人に自己の名義の使用を許し、当該他人がその名義を使

用して取引主任者である旨の表示をした場合(名義貸しである)、指示を受けることもあ

るし、事務の禁上の処分を受けることもある(業法68条1項、2項)。

○2 正しい。宅地建物取引主任者証が、不正の手段により交付を受けたものであるとき

は、登録の消除処分の対象である(業法68条の2第1項3号)。しかし、消除処分ができ

るのは、登録をした甲県知事しかできない。乙県知事から登録の消除処分されることは

ない。

×3 誤り。取引主任者が、取引主任者として行う事務の禁上の処分を受け、当該処分

に違反した場合、登録の消除処分の対象である(業法68条の2第1項4号)。どの知事

が事務の禁止処分をした場合でも、登録をした甲県知事は、登録の消除処分をするこ

とができる。

×4 誤り。取引主任者は、乙県内の業務に関し、甲県知事又は乙県知事から報告を

求められることはある(業法72条3項)。この点は正しい。しかし、乙県知事から必要な

指示を受けることもある(業法68条3項)。

【問 43】 正解 4

×1 誤り。甲県知事免許業者が、国土交通大臣へ免許換えの申請をしなければなら

ないのは、乙県内に事務所(政令使用人を設置する支店などであり、単なる案内所で

はない)を設置する場合である(業法7条1項3号)。単に乙県で取引するからといって

免許換えをする必要はない。

×2 誤り。他の知事免許を受けた宅建者業に対して、業務停止又は指示処分をした

知事は、遅滞なく、その旨を免許をした知事に通知しなければならない(業法70条3

項)。知事から通知であり、業者が届け出るものではない。ちなみに、知事が大臣免許

を受けた宅建業者対して業務停止又は指示処分をしたときは、遅滞なく、大臣に報告

しなければならない(同)。

×3 誤り。懲役刑に処せられ、その刑の執行を終わった日から5年を経過していない

者は、免許の欠格要件に該当する(業法5条1項3号)。そして、法人が免許受けようと

する場合、免許の欠格要件に該当する者が法人の役員のみならず政令で定める使用

人であれば、当該法人は免許を受けることができない(業法5条1項7号)。

○4 正しい。宅地建物取引業に関し不正又は不誠実な行為をするおそれが明らかな

は、それだけで、免許を受けることができない(業法5条1項5号)。

【問 44】 正解 1

×ア 誤り。登録を受けている者は、登録事項に変更があった場合は、遅滞なく、変更

の登録の申請をしなければならない(業法20条)。この点は正しい。しかし、破産者と

なった場合はその旨の届出を、「遅滞なく、」ではなく、30日以内に、登録している都道

府県知事に行わなければならない(業法21条)。

×イ 誤り。宅地建物取引主任者証の交付を受けようとする者(宅地建物取引主任者

資格試験合格日から1年以内の者又は登録の移転に伴う者を除く。)は、都道府県知

事が指定した講習を、「交付の申請の90日前から30日前までに」ではなく、交付の申

請前6ヶ月以内に受講しなければならない(業法22条の2第2項)。

×ウ 誤り。宅建業法第35条に規定する事項を記載した書面(重要事項書面)への記

名押印及び同法第37条の定により交付すべき書面(契約書面)への記名押印につい

ては、専任に限らず、一般の取引主任者も行うことができる。

○エ 正しい。取引主任者は、事務禁止処分を受けた場合、宅地建物取引主任者証を

その交付を受けた都道府県知事に速やかに提出しなければならないが、提出しなかっ

たときは10万円以下の過料に処せられることがある(業法22条の2第7項、86条) 。

 以上より、正しいものはエの一つであり、1が正解。

【問 45】 正解 4

×1 誤り。宅建業者が自ら売主として、宅建業者でない買主に新築住宅を販売する

場合、買主に引き渡した新築住宅について、住宅販売瑕疵担保保証金の供託又は

住宅販売瑕疵担保責任保険契約の締結を行う義務を負う(住宅瑕疵担保履行法2

条6項2号ロ、11条1項2項)。Bが建設業者であり、宅建業者ではないから、義務を

負う。

×2 誤り。宅建業者は、基準日に係る住宅販売瑕疵担保保証金の供託及び住宅

販売瑕疵担保責任保険契約の締結の状況について届出をしなければ、「当該基準

日から3週間を経過した日以後、」ではなく、当該基準日の翌日から起算して50日

を経過した日以後、新たに自ら売主となる新築住宅の売買契約を締結してはなら

ない(住宅瑕疵担保履行法13条本文)。

×3 誤り。宅建業者は、買主に対する供託所の所在地等について説明する場合、

売買契約を締結する前に、書面を交付してしなければならない(住宅瑕疵担保履

行法15条)。引き渡すまでに行えばよいというのは、誤り。

○4 正しい。宅建業者が住宅販売瑕疵担保保証金を供託する場合、当該住宅の

床面積が55㎡以下であるときは、新築住宅の合計戸数の算定に当たって、2戸を

もって1戸と数えることになる(住宅瑕疵担保履行法11条3項、施行令5条)。 

14年02月20日 17時00分48秒
Posted by: mansyonkanrisi

 先日古いパソコンが故障したので、新しいパソコンに変更した。ところが、

そのせいで、前にブログで公開した平成25年度の宅建試験の解説が改行

されずに、ずっと繋がったままになってしまい、大変読みずらくなってしまっ

た。宅建業法の解説は何ら変更されていないのに、権利関係と法令その他

は変更されてしまった。ワードから同じように貼り付けたのに、なぜ変になっ

たのか、さっぱり分からん。

 新しく入力して改行したら、勝手に一行開いてしまう。これも分からん。

宅建業法の解説も再び載せることにする。

 これを参考にして下さっている方々には大変ご迷惑をおかけしました。

【問 26】 正解 1

○1 正しい。道路交通法違反により罰金の刑に処せられても、免許の欠格要件で

はなく(業法5条1項3号の2参照)、A社の免許は取り消されることはない。

×2 誤り。刑法第222条(脅迫)の罪により罰金の刑に処せられた場合、免許の

欠格要件に該当する。宅建業者の単なる使用人と異なり、宅建業を行う支店の

代表者(政令で定める使用人である)が免許の欠格要件に該当するようになった

場合、会社の免許は取り消される(業法5条1項3号の2、7号)。

×3 誤り。刑法第208条の3(凶器準備集合及び結集)の罪により罰金の刑に処

せられた場合、免許の欠格要件に該当する。法人の役員(非常勤も含まれる)が

免許の欠格要件に該当するようになった場合、法人(会社など)の免許は取り消さ

れる(業法5条1項3号の2、7号)。

×4 誤り。懲役の刑に処せられた場合、どのような犯罪であっても免許の欠格要

件に該当する(業法5条1項3号)。そして、法人の役員が懲役刑に処せられて、

実刑ではなく、執行猶予が付されても、法人の免許は取り消される(同7号)。

※ 免許を受けた後に免許の欠格事由が発生した場合には、免許の取消事由に

なるということを理解してほしい。

【問 27】 正解 1

○1 正しい。宅建業者は、免許の取消処分(処分の理由は問わない)を受けた場

合であっても、営業保証金を取り戻すことができる(業法30条1項)。

×2 誤り。信託業法の免許を受けた信託会社は、国土交通大臣に届け出ることに

よって国土交通大臣の免許を受けた宅建業者とみなされる(業法77条)。このよう

に信託会社は、免許を受けていないため免許に関する規定は適用されない。よっ

て、免許を取り消されることはない。業務停止処分などは受ける。

×3 誤り。宅建業者が、本店を移転したためその最寄りの供託所が変更した場合、

遅滞なく、従前の本店の最寄りの供託所に対し、営業保証金の保管換えを請求し

なければならないのは、金銭のみで供託している場合である(業法29条1項)。そ

れ以外の場合には、一度、新しい本店の最寄りの供託所に供託をしなければなら

ない。

×4 誤り。宅建引業者は、その免許を受けた国土交通大臣又は都道府県知事か

ら、営業保証金の額が政令で定める額に不足することとなった旨の通知を受けた

ときは、「供託額に不足を生じた日」からではなく、免許権者から補充供託の通知

書の送付を受けた日から2週間以内に、その不足額を供託しなければならない

(業法28条1項)。

【問 28】 正解 2

×ア 誤り。指定流通機構に登録した宅建業者は、登録にかかる契約が成立した

ときは、遅滞なく、登録番号、取引価格、売買契約の成立した年月日を指定流通

機構に通知しなければならない(規則15条の11)。売主及や買主の氏名は通知

事項ではない。

○イ 正しい。宅建業者は、売買等の媒介契約を締結し依頼者に対して宅地・建物

を売買すべき価額又はその評価額(交換の場合である)について意見を述べると

きは、その根拠を明らかにしなければならない(業法34条の2第2項)。

○ウ 正しい。専任媒介契約の有効期間は3ヶ月を超えることはできない(業法34

条の2第3項)。この有効期間は、依頼者の申出により更新することができるが、更

新の時から3月を超えることができない(業法34条の2第4項)。

 以上より、正しいものは、イとウの二つであり、2が正解。

【問 29】 正解 2

×1 誤り。重要事項の説明義務は宅建業者に義務付けられているのであり、宅建

業者でない者が売主となる場合、重要事項の説明義務はない。買主となろうとする

者は、例え宅建業者であっても重要事項の説明義務はない(業法35条1項)。設問

のような取引においては、重要事項の説明は必要ないのである。

○2 正しい。建物の管理が管理会社に委託されている当該建物の賃貸借契約の

媒介をする宅建業者は、当該建物が区分所有建物であるか否かにかかわらず、

その管理会社の商号又は名称及びその主たる事務所の所在地を、借主に説明し

なければならない(業法35条1項6号、規則16条の2第8号、業法35条1項14号、

規則16条の4の3第12号)。

×3 誤り。区分所有建物の売買において、売主が宅建業者である場合(買主が業

者であろうがなかろうが同じこと)、当該売主は当該買主に対し、当該一棟の建物

に係る計画的な維持修繕のための修繕積立金積立総額(マンション全体の積立金

総額のこと)及び売買の対象となる専有部分に係る修繕積立金額の説明の他、滞

納(積立金総額の滞納額と売買の対象となる専有部分に係る滞納額の双方)があ

れば、その額について説明をしなければならない。

×4 誤り。宅建業者間の売買契約においても、当該売主は当該買主に対し、供託

所等の説明をするようにしなければならない(業法35条の2)。

【問 30】 正解 4

×1 誤り。宅建業者間の宅地又は建物の売買おいても、重要事項説明は行わな

ければならない。そして、重要事項の説明は書面を交付してしなければならない

(業法35条1項)。

×2 誤り。宅建業者が、取引主任者をして取引の相手方に対し重要事項説明を

させる場合、当該取引主任者は、取引の相手方から請求がなくても、宅地建物取

引主任者証を相手方に提示しなければなない(業法35条4項)。この点は正しい。

しかし、提示しなかったときは、「20万円以下の罰金」ではなく、「10万円以下の

過料」に処せられることがある。

×3 誤り。建物(昭和56年5月31日以前に新築)が、一定の者(指定確認検査機

関、建築士、登録住宅性能評価機関又は地方公共団体)による耐震診断を受けた

ものであるときは、宅建業者は、売買・交換の媒介に限らず、貸借の媒介の場合に

もその内容を重要事項説明において説明しなければならない(業法35条1項14号、

規則16条の4の3第5号)。

○4 正しい。宅建業者は、重要事項説明において、取引の対象となる宅地又は建

物が、津波防災地域づくりに関する法律の規定により指定された津波災害警戒区

域内にあるときは、その旨を説明しなければならない(業法35条1項14号、規則

16条の4の3第3号)。

【問 31】 正解 2

×ア 誤り。自ら貸主として契約を締結した場合、それは宅建業に該当せず、例え

貸主が宅建業者(宅建業と賃貸業を兼業しているわけである)であっても、その相

手方に37条書面を交付する義務はない。宅建業者が賃貸借契約を媒介する場合

には、媒介は宅建業に該当し、媒介業者は、貸主借主双方に対して37条書面を

交付しなければならないことと区別して理解すること。また、宅建業者が自ら売主

(又は買主)として契約を締結(宅建業である)した場合、その相手方に37条書面

を交付しなければならないことも理解すること。

○イ 正しい。宅建業者は、建物の売買に関し、その媒介により契約が成立した場

合に、当該売買契約の各当事者のいずれに対しても、37条書面を交付しなけれ

ばならない。重要事項説明と異なることに注意。

○ウ 正しい。宅建業者は、建物の売買(貸借)に関し、その媒介により契約が成

立した場合に、天災その他不可抗力による損害の負担に関する定め(危険負担

の特約である)があるときは、その内容を記載した37条書面を交付しなければな

らない。

×エ 誤り。宅建業者間の売買においては、売主は買主に対し、買主は売主に対し、

37条書面を交付しなければならない。重要事項説明と異なり、買主が宅建業者で

あれば、相手方である売主に対して37条書面の交付が必要であることに注意。

そして、宅建業者間の売買を媒介した宅建業者は、売主と買主に37条書面の交

付が必要である(イ参照)。

 以上により、正しいものの組み合わせは、イとウであり、2が正解。

【問 32】 正解 2

×ア 違反する。未完成で、かつ、建築確認の済んでいない建物については、宅

建業に関する全ての広告が禁止されている(業法33条)。

○イ 違反しない。アで見たように、未完成で、かつ、建築確認の済んでいない建

物については、宅建業に関する全ての広告が禁止されている(業法33条)が、

貸借(賃貸借と使用貸借)の代理・媒介そのものは禁止されていないことに注意

(業法36条)。つまり、貸借の代理・媒介を広告なくしてすることは違法ではない

のである。

○ウ 違反しない。建築確認が済んでいれば、未完成の建物であっても、宅建業

の契約の締結の制限(業法36条)はなくなる。広告についての制限もなくなる(業

法33条)。また、建築確認がなくても、建物が完成すると、広告の制限も、取引の

制限も同じようになくなることに注意。

×エ 違反するアで見たように、未完成で、かつ、建築確認の済んでいない建物

については、宅建業に関する全ての広告が禁止されている(業法33条)。

 以上より、違反しないものの組み合わせは、イとウであり、2が正解。

【問 33】 正解 2

×1 誤り。管理組合の総会の議決権に関する事項については、重要事項の説明

事項に入っていない(業法35条)。

○2 正しい。分譲マンションの売買の媒介を行う場合、建物の区分所有等に関す

る法律第2条第4項に規定する共用部分に関する規約の定めがあればその内容、

まだ、案の段階であれば、その案の内容を説明しなければならない(業法35条1

項6号、規則16条の2第2号)。

×3 誤り。建物の貸借の媒介を行う場合、建築基準法に規定する容積率及び建

ぺい率に関する制限については、その説明をする必要はない(業法35条1項2号、

施行令3条)。容積率や建ぺい率は、土地についての制限であり、土地の売買・貸

借、建物の売買には必要であるが、建物の貸借には必要がないからである。

×4 誤り。建物(マンションも含む)の貸借の媒介を行う場合、借賃以外に授受され

る金銭の定めがあるときは、その金銭の額、授受の目的を説明しなければならない

(業法35条1項7号)。しかし、保管方法については説明の必要はない。そもそもこれ

らの金銭を保管しておく必要もない。

【問 34】 正解 3

×1 誤り。喫茶店において買受けの申込みをした場合(買主が自ら指定した場合で

も同じこと)、クーリング・オフの適用があり、買主は契約を解除できる。売主は、既に

支払われている手付金等の一切の金銭を返還しなければならない(業法37条の2

第3項)。契約の無条件の解除等を認めているのである。

×2 誤り。ホテルのロビーにおいて買受けの申込みをした場合、クーリング・オフの

適用がある。ただし、その際にクーリング・オフについて書面で告げられ場合には、

告げられた日から起算して8日を経過すると、契約の解除等はできなくなる(業法

37条の2第1項1号)。したがって、月曜日に告げられた場合には、翌週の月曜日ま

でに契約の解除をすることができるのである。火曜日にはできなくなる。

○3 正しい。売主より当該宅地の売却について代理又は媒介の依頼は受けていな

い宅建業者であるハウスメーカーの事務所において買受けの申込みをした場合、

クーリング・オフの適用がある(規則16条の5参照)。その際、クーリング・オフにつ

いて書面で告げられているが、2で見たように、その6日後に、Bが契約の解除の

書面をA社に発送しているので、Bは売買契約を解除することができる。8日以内

に解除等の書面を発すれば、その効力が認められる(業法37条の2第2項)。発

信主義である。

×4 誤り。申込みをした場所が、10区画の宅地を販売する案内所で土地に定着

する案内所であれば、クーリング・オフの適用はないが、テント張りの案内所であ

るので、クーリング・オフの適用がある(規則16条の5)。その後、事務所で契約を

締結した場合でも、クーリング・オフの適用はある。代金全額を支払っても、さらに、

物件の引渡しがなければ、買主は、契約の解除ができる(業法37条の2第1項2

号)。売主は契約の解除を拒むことができない。

【問 35】 正解 2

×ア 記載事項ではない。保証人の氏名及び住所は記載事項ではない。

○イ 記載事項である。建物の引渡しの時期は必要的な記載事項である。

○ウ 記載事項である。借賃の額並びにその支払の時期及び方法は必要的な記載

事項である。

×エ 記載事項ではない。媒介に関する報酬の額は媒介書面の記載事項である。

×オ 記載事項ではない。借賃以外の金銭の授受に関する定めがある場合、その

額、授受の時期・目的は記載事項であるが、授受の方法は記載事項ではない。

 以上よりイとウが正しく、2が正解。

エースビジネス学院   民本廣則

http://www.acebusinessgakuin.com 

14年02月20日 16時29分04秒
Posted by: mansyonkanrisi

【問 23】 正解 3

×1 誤り。印紙税を納付するため当該課税文書に印紙をはり付ける方法で納付

し(印紙税法8条1項)、そして、課税文書の作成者は、課税文書と印紙の彩紋と

にかけて判明に消印しなければならないとされる(同2項)。この消印の方法は、

自己又はその代理人(法人の代表者を含む。)、使用人その他の従業者の印章

又は署名で消さなければならないとされている(施行令5条)。したがって、契約当

事者の従業者の印章又は署名で消印しても、消印したことになるのである。

×2 誤り。土地の売買契約書(記載金額2,000万円)を3通作成し、売主A、買主

B及び媒介した宅地建物取引業者Cがそれぞれ1通ずつ保存する場合、すべての

契約書に、印紙税は課れる(印紙税法2条、別表)。

○3 正しい。一つの契約書が不動産譲渡契約書(1号文書)と建設工事請負契約

書(2号文書)の双方に該当するときには、原則として、全体が1号文書となり、契

約金額の総額が記載金額となる。しかし、記載金額を1号文書に係るものと2号文

書に係るものとに区別できるときは、記載金額の大きいものを記載金額とし、同じ

であるときは、1号文書の記載金額を記載金額とするとされる(別表1)。設問では、

1号文書と2号文書とが明確に区別されて記載されているので、記載金額の大き

い、2号文書の5,000万円が記載金額となる。

×4 誤り。印紙税の記載金額には、消費税抜きの金額を記載金額とされる。設問

では、課税標準となる当該契約書の記載金額は、2,000万円である。税金に税金

をかけるような二重課税となることを避けるためである。

【問 24】 正解 4

×1 誤り。国会議員及び地方団体の議会の議員は、固定資産評価員を兼ねること

ができないとされている(地方税法406条1項1号)。

×2 誤り。登記所は、土地又は建物の表示に関する登記をしたときは、「30日以内

に」ではなく、10日以内に、その旨を当該土地又は家屋の所在地の市町村長に通

知しなければならないとされている(地方税法382条1項)。

×3 誤り。住宅用地に対する固定資産税の課税標準の特例は、面積が200㎡以

下の部分には6分の1、200㎡を超える部分には3分の1とされている(地方税法

349条の3の2)。

○4 正しい。納税者が納期限までに固定資産税に係る地方団体の徴収金を完納し

ない場合においては、市町村の徴税吏員は、原則として納期限後20日以内に、督

促状を発しなければならない(地方税法371条1項)。そして、固定資産税に係る徴

収金について滞納者が督促を受け、その督促状を発した日から起算して10日を経

過した日までに、その督促に係る固定資産税の徴収金について完納しないときは、

市町村の徴税更員は、滞納者の財産を差し押さえなければならない(地方税法373

条1号)。

【問 25】 正解 3

×1 誤り。地価公示法の目的は、都市及びその周辺の地域等において、標準地を

選定し、その正常価格を公示することにより、一般の土地取引価格に対して指標を

与え、及び公共の利益となる事業の用に供する土地に対する土地に対する適正な

補償金の額の算定等に資し、もって適正な地価の形成に寄与することである(地価

公示法1条)。

×2 誤り。標準地は、土地鑑定委員会が、自然的及び社会的条件からみて類似の

利用価値を有すると認められる地域において、土地の利用状況、環境等が通常と

認められ一団の土地について選定する(地価公示法1条)。「当該土地の使用又収

益を制限する権利が存しない土地」という限定はない。

○3 正しい。公示価格を規準とするとは、対象土地の価格を求めるに際して、当該

対象土地とこれに類似する利用価値を有すると認められる1又は2以上の標準地

との位置、地積、環境等の土地の客観的価値に作用する諸要因についての比較を

行い、その結果に基づき、当該標準地の公示価格と当該対象土地の価格との間に

均衡を保たせることをいう(地価公示法11条)。

×4 誤り。不動産鑑定士は、土地鑑定委員会の求めに応じて標準地の鑑定評価を

行うに当たっては、近傍類地の取引価格から算定される推定の価格、近傍類地の

地代等から算定される推定の価格又は同等の効用を有する土地の造成に要する

推定の費用の額を勘案してこれを行わなければならない(地価公示法4条)。「いず

れかを勘案」するというのが誤り。

【問 46】 正解 1

×1 誤り。機構は、住宅の建設又は購入に必要な資金の貸付けに係る金融機関の

貸付債権の譲受けのみならず、当該住宅の建設又は購入に付随する土地又は借地

権の取得に必要な資金の貸付けに係る貸付債権についても、譲受けの対象としてい

る(住宅支援機構法13条1項1号、施行令5条1項)。

○2 正しい。機構は、災害により、住宅が滅失した場合において、それに代わるべき

建築物の建設又は購入に必要な資金の貸付けを業務として行っている(住宅支援機

構法13条1項5号)。

○3 正しい。機構は、貸付けを受けた者とあらかじめ契約を締結して、その者が死亡

した場合に支払われる生命保険の保険金を当該貸付けに係る債務の弁済に充当す

る団体信用生命保険に関する業務を行っている(住宅支援機構法13条1項10号)。

○4 正しい。機構が証券化支援事業(買取型)により譲り受ける貸付債権は、自ら居

住する住宅又は自ら居住する住宅以外の親族の居住の用に供する住宅を建設し、

又は購入する者に対する貸付けに係るものでなければならない(住宅支援機構法

13条1項5号、住宅金融支援機構業務方法書3条1号)。

【問 47】 正解 3

×1 誤り。宅地又は建物の見取り図、完成図又は完成予想図は、その旨を明示して

用い、当該物件の周囲の状況について表示するときは、現況に反する表示をしない

こととなっている(表示に関する公正競争規約施行規則10条(23))。

×2 誤り。地目は、登記簿に記載されているものを表示すること。この場合において、

現況の地目と異なるときは、現況の地目を併記することとなっている(表示に関する

公正競争規約施行規則10条(19))。

○3 正しい。管理費については、一戸当たりの月額を表示すること。ただし、住戸に

より管理費が異なる分譲マンションの販売広告を行う場合、全ての住戸の管理費を

示すことが広告スペースの関係で困難なときには、1住戸当たりの月額の最低額及

び最高額を表示することができる(表示に関する公正競争規約施行規則10条(41))。

×4 誤り。新築とは、建築後一年未満であって、居住の用に供されたことがないもの

をいう(表示に関する公正競争規約18条1項(1))。

【問 48】 正解 3

○1 正しい。平成23年度法人企業統計年報(平成24年9月公表)によれば、平成23

年度における不動産業の経常利益は約3兆3,000億円となっており、前年度比0.5

%減となった。

○2 正しい。平成25年地価公示(平成25年3月公表)によれば、平成24年の1年間

の地価は、全国的に依然として下落を示したが、下落率は縮小し、上昇又は横ばい

の地点が大幅に増加している。

×3 誤り。建築着工統計(平成25年1月公表)によれば、平成24年の持家戸数は

3年連続で増加している。この点は正しい。しかし、貸家戸数は「3年ぶりに減少」で

はなく、4年ぶりに増加している。

○4 正しい。平成25年版土地白書(平成25年6月公表)によれば、土地取引につい

て、売買による所有権移転登記の件数でその動向を見ると、平成24年の全国の土

地取引件数は120.4万件となり、9年ぶりに増加に転じた。

【問 49】 正解 4

○1 適当。国土を山地と平地に大別すると、山地の占める比率は、国土面積の約

75%である。

○2 適当。火山地は、国土面積の約7%を占め、山林や原野のままの所も多く、水

利に乏しい。

○3 適当。台地・段丘は、国土面積の約12%で、地盤も安定し、土地利用に適した

土地である。

×4 最も不適当。低地は、国土面積の約「25%」ではなく、「13%」であり、低地は

洪水や地震による液状化などの災害危険度は「低い」のではなく、高い。

【問 50】 正解 4

○1 適当。耐震構造は、建物の柱、はり、耐震壁などで剛性を高め、地震に対して

十分耐えられるようにした構造である。

○2 適当。免震構造は、建物の下部構造と上部構造との間に積層ゴムなどを設置

し、揺れを減らす構造である。

○3 適当。制震構造は、制震ンパーなどを設置し、揺れを制御する構造である。

×4 最も不適当。既存不適格建築物の耐震補強として、制震構造や免震構造を用

いることが適していないとは言えない。

14年02月20日 15時59分19秒
Posted by: mansyonkanrisi

 先日古いパソコンが故障したので、新しいパソコンに変更した。ところが、

そのせいで、前にブログで公開した平成25年度の宅建試験の解説が改行

されずに、ずっと繋がったままになってしまい、大変読みずらくなってしまっ

た。宅建業法の解説は何ら変更されていないのに、権利関係と法令その他

は変更されてしまった。ワードから同じように貼り付けたのに、なぜ変になっ

たのか、さっぱり分からん。

 新しく入力して改行したら、勝手に一行開いてしまう。これも分からん。

これを参考にして下さっている方々には大変ご迷惑をおかけしました。

【問 15】 正解 2

○1 正しい。都市計画施設の区域又は市街地開発事業の施行区域内において建

築物の建築をしようとする者は、都道府県知事等の許可を受けなければならない

(都計法53条1項)。しかし、都市計画事業の施行として行う行為等については、例

外とされている(都計法53条1項3号)。

×2 誤り。特定用途制限地域は、良好な環境の形成又は保持のため当該地域の

特性に応じて合理的な土地利用が行われるよう、制限すべき特定の建築物等の用

途の概要を定める地域である(都計法9条14項)。この点は正しい。しかし、特定用

途制限地域は用途地域の一つではなく、用途地域の定められていない土地の区域

(市街化調整区域を除く)内において定められる地域地区の一つである。

○3 正しい。都市計画事業の認可又は承認の告示があった後においては、当該事

業地内において、当該都市計画事業の施行の障害となるおそれがある土地の形質

の変更、建築物の建築その他工作物の建設又は重量5トンを超える物件の設置・堆

積を行おうとする者は、都道府県知事等の許可を受けなければならない(都計法65

条1項、施行令40条)。

○4 正しい。一定の条件に該当する土地の区域における地区計画については、劇場、

店舗、飲食店その他これらに類する用途に供する大規模な建築物の整備による商業

その他の業務の利便の増進を図るため、一体的かつ総合的な市街地の開発整備を

実施すべき区域である開発整備促進区を都市計画に定めることができる(都計法12

条の5第4項)。

【問 16】 正解 3

×1 誤り。開発行為とは、主として建築物の建築又は特定工作物の建設の用に供す

る目的で行う土地の区画形質の変更をいう(都計法4条12項)。

×2 誤り。市街化調整区域において行う開発行為は、原則として、その面積に関係な

く、開発許可をうけなければならない(都計法29条1項)。

○3 正しい。市町村が設置する医療法に規定する診療所は、開発許可の例外とされ

ていないので、市街化区域においては、原則として、開発行為の規模が1,000㎡を超

えるものについては、開発許可が必要である(都計法29条1項)。

×4 誤り。非常災害のため必要な応急措置として行う開発行為は、その規模に関係

なく、開発許可の例外とされている(都計法29条1項10号)。

【問 17】 正解 4

×ア 誤り。居室の天井の高さは、2.lm以上でなければならない(施行令21条1項)。

そして、一室の居室で天丼の高さが異なる部分がある場合においては、その平均の

高さによるものとされている(同2項)。

×イ 誤り。屋上広場又は2階以上の階にあるバルコニーその他これに類するもの

周囲には、安全上必要な高さが1.lm以上の手すり壁、さく又は金網を設けなけ

ればならないとされている(施行令126条1項)。「各階のバルコニーには」という点

が誤り。しかし、そもそも1階にバルコニーがあるのか疑問である。もし、バルコニー

は2階以上にしかないのであれば、1階にもバルコニーがあるがごとき出題はおか

しいのではないか。しかし、いずれにしても、この肢は誤りである点では変わりない。

※ たまに似たような問題が出題されている。平成23年度の問27の肢2は、「刑法

246条の詐欺罪により罰金刑に処せられた場合、免許の欠格事由になる。」というこ

とになっているので、誤りであり、正解の肢である。一定の犯罪については、罰金刑

に処せられても、免許の欠格とされている。詐欺罪はその一定の犯罪の中に入って

いないから、免許の欠格にならないので、それは誤りの肢となる。しかし、そもそも詐

欺罪の法定刑は5年以下の懲役であり、選択刑として罰金の刑を科されることはあり

えない。このようなありえない問題を出題して誤りとしている。極めて不適切である。

出題者は、詐欺罪にも懲役と罰金が選択的に規定されていると誤解したのではない

かと思う。この問題が、逆に、「詐欺罪で罰金刑に処せられても免許の欠格ではな

い。」というように出題されたら、これを正解の肢とすべきか。この場合には、そもそ

も詐欺罪で罰金刑に処されることはありえないから、正しい肢とは言えないであろう。

×ウ 誤り。石綿以外の物質で居室内において衛生上の支障を生ずるおそれがあ

るものとして政令で定める物質は、クロルピリホスとホルムアルデヒドである(建基法

28条の2第3号、施行令20条の5)。ホルムアルデヒドのみではない。

×工 誤り。高さが「20m」ではなく、31mを超える建築物には、原則として非常用の

昇降機を設けなければならない(建基法34条2項)。

 以上より、四つすべて誤っており、4が正解。

【問 18】 正解 3

○1 正しい。地方公共団体は、特殊建築物、階数が3以上である建築物、延べ面積

が1,000㎡を超える建築物等の敷地が接しなければならない道路の幅員につ いて、

条例で、避難又は通行の安全の目的を達するために必要な制限を付加することがで

きる(建基法43条2項)。

○2 正しい。建ぺい率の限度が10分の8とされている地域内で、かつ、防火地域内

にある耐火建築物については、建ぺい率の制限は適用されない(建基法53条5項

1号)。

×3誤り。法第56条第1項第3号の規定(北側斜線制限)は、近隣商業地域には適

用されないが、第二種中高層住居専用地域においては、日影規制の対象区域でな

ければ、適用される。用途制限と異なり(次の4参照)用途地域が二つにわたる場合

でも、同じである(建基法91条)。当該建築物の過半が属する地域の規定が適用さ

るものではない。建築物の高さについては、敷地や建築物が異なる地域や区域に

わたる場合でも、それぞれの地域や区域の規定が適用されることに注意すること。

○4 正しい。建築物の敷地が二つの用途地域わたる場合には、その敷地の全部に

ついて敷地の過半の属する用途地域の制限が適用される(建基法91条)。準住居

地域においては、作業場の床面積の合計が150㎡以下の自動車修理工場は建築

可能であり(建基法48条、別表)、敷地の過半が準住居地域に存する場合には、作

業場の床面積の合計が100㎡の自動車修理工場は建築可能である。

【問 19】 正解 1

×1 誤り。宅地造成工事規制区域内において宅地造成に関する工事を行う場合、

宅地造成に伴う災害を防止するために行う高さ5mを超える擁壁の設置(1,500

㎡を超える土地で排水施設の設置も)に係る工事については、政令で定める資格

を有する者の設計によらなければならない(宅造法9条2項、施行令16条)。4mと

いうのが誤り。

○2正しい。切土・盛土をする土地の面積が500㎡を超えれば、わずかな切土・盛

土をする場合でも、宅地造成に該当し(宅造法2条2号、施行令3条4号)、宅地造

成許可が必要である(宅造法8条1項)。

○3 正しい。盛土が高さ1mを超える崖を生ずることとなるものに関する工事につ

いては、面積に関係なく、宅地造成に該当し(宅造法2条2号、施行令3条2号)、

宅地造成許可が必要である(宅造法8条1項)。

○4 正しい。都道府県知事は、宅地造成工事規制区域内の宅地について、宅地

造成に伴う災害の防止のため必要があると認める場合においては、その宅地の

所有者、管理者、占有者、造成主又は工事施行者に対し、擁壁の設置等の措置を

とることを勧告することができる(宅造法16条2項)。

【問 20】 正解 1

○1 正しい。換地処分は、換地計画に係る区域の全部について土地区画整理事

業の工事が完了した後において、遅滞なく、しなければならない。ただし、規準、規

約、定款又は施行規定に別段の定めがある場合においては、その工事が完了す

る以前においても換地処分をすることができる(区画整理法103条2項)。

×2 誤り。換地処分は、換地計画において定められた関係事項を「公告」ではなく、

通知して行うもの とされる(区画整理法103条1項)。

×3 誤り。換地計画において、保留地を定めようとする場合において、土地区画

整理審議会の同意を得なければならないのは、公的な施行(都道府県、市町村、

国土交通大臣、地方住宅供給公社等)の場合であり、民間施行(個人、区画整理

組合、区画整理会社)の場合には、土地区画整理審議会の同意は不要である

(区画整理法96条3項)。

×4 誤り。個人施行者は、仮換地を指定しようとする場合においては、あらかじめ、

その指定について、従前の宅地の所有者(その宅地についての賃借権等を施行

者に対抗できる者も)及び仮換地となるべき宅地の所有者(その宅地についての

賃借権等を施行者に対抗できる者も)の同意を得る必要がある(区画整理法98条

3項)。ちなみに、組合や会社も一定の者の同意が必要であり(区画整理法98条3

項、4項)、公的施行の場合には、土地区画整理審議会の意見を聴かなければな

らないとされている(区画整理法98条3項)。

【問 21】 正解 4

×1 誤り。農地の賃貸借について法第3条第1項の許可を得て農地の引渡しを受

けた場合、土地登記簿に登記をしなくても、その後、その農地について所有権を取

得した第三者に対抗することができる(農地法16条1項)。農地については、借家と

同じように引渡しによって対抗要件を満たすとして、耕作者を保護しているのである。

×2 誤り。現に畑として耕作されている土地であれば、土地登記簿上の地目が何で

あれ、農地法の適用を受ける農地に当たる。農地かどうかは、土地登記簿上の地目

とは関係なく、現況で判断する。なお、土地登記簿の表題部に「地目」として登記され

るものとして、田、畑、宅地、学校用地、塩田、池沼、山林、牧場、原野、墓地、ため

池、堤、保安林、公衆用道路、公園、雑種地等がある(不動産登記規則99条)。

×3 誤り。国又は都道府県が市街化調整区域内の農地(1ヘクタール)を取得して

学校を建設する場合、許可の例外とはされていない(農地法5条1項1号)。国又は

都道府県が一定の施設(道路、農業用排水施設、地域振興上又は農業振興上必

性が高いと認められる施設)の用に供するために取得する場合には例外として

許可は不要である。学校施設や医療施設は例外に入っていないので(農地法4条

1項2号、規則28条)、許可が必要である。しかし、国又は都道府県と都道府県知

事(農地が4ヘクタールを超えれば農林水産大臣)との協議が成立すれば、農地法

第5条第1項の許可があったものとみなされるので、許可を受ける必要がないので

ある(農地法5条4項1号)。

○4 正しい。市街化調整区域内の農地を自己の住宅用地として転用する場合、農

地法4条第1項の許可を受ける必要がある。当該農地を許可を得て取得したか、許

可を要せずに取得したかによって、転用許可に影響はない。

【問 22】 正解 2

×1 誤り。地すべり等防止法によれば、地すべり防止区域内において、地表水を放

流し、又は停滞させる行為をしようとする者は、一定の場合を除き、「市町村長の許

可」ではなく、都道府県知事の許可を受けなければならない(地すべり等防止法18条

1項)。

○2 正しい。国土利用計画法によれば、都市計画区域内の市街化区域内の土地に

ついては、2,000㎡以上、市街化区域以外の都市計画区域内では、5,000㎡以上

の土地について、売買等の契約をする場合、事後届出(契約日から2週間以内に)を

行う必要がある(国土法23条1項、2項)。しかし、契約の当事者の一方又は双方が

国や地方公共団体等である場合には、許可は不要とされている(国土法23条2項3

号、18条)。

×3 誤り。土壌汚染対策法によれば、形質変更時要届出区域内において土地の形

質の変更をしようとする者は、着手する日の14日までに、都道府県知事に届け出な

ければならない。ただし、非常災害のために必要な応急措置として行う行為について

は、この事前届出は不要とされている(土壌汚染対策法12条1項、3号)。したがって、

この場合も事前届出が必要とする設問は誤りである。しかし、非常災害のために必要

な応急措置として行う行為については、事前の届出は不要であるが、土地の変更後、

14日以内に知事に届出(事後届出)が必要とされていることに注意(土壌汚染対策

法12条3項)。

×4 誤り。河川法によれば、河川区域内の土地において工作物を新築し、改築し、

又は除却しようとする者は、「河川管理者と協議」ではなく、河川管理者の許可を受

けなければならない(河川法26条1項)。

エースビジネス学院   民本廣則

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14年02月20日 15時17分03秒
Posted by: mansyonkanrisi

【問 8】 正解 4

×1 誤り。義務がないのに他人の事務を管理することを事務管理という。民法

これについて規定している(民法697条~702条)。設問は事務管理の問題

である。管理者は、本人のために有益な費用(ここでは保存の費用も含むとい

のが判例である。)を支出したときは、本人に対してその償還を請求できる(民

法702条1項)。管理者(B)が本人(A)のために緊急措置をとっており、Bはそ

の費用をAの承諾がなくても、Aに請求するこができる。

×2 誤り。建物所有を目的とする土地の賃貸借契約においては、建物建築時

に土地に石垣や擁壁の設置、盛土や杭打ち等の変形加工が必要であれば、契

約において定めるのが普通であるが、例え契約において定めなくても、建物所

有目的のために必要なこれらの工事について、必ず賃貸人の承諾を得なけれ

ばならないわけではない。賃借人がこれらの工事を行った場合には、必要費な

いしは有益費として賃貸人にその費用を請求できるとされており(民法608条)、

賃貸人の承諾なくして、賃借人は、このような工事ができることが前提とされて

いるのである。

×3 誤り。賃貸人は、賃貸物の使用及び収益に必要な修繕をする義務を負う

(民法606条1項)。そして、賃貸人が修繕義務を履行しない場合には、賃借人

は賠償もしくは減額を受けるべき限度において、賃料の支払いを拒むことがで

きる(判例)。賃借人は目的物の使用収益に関係なく賃料全額の支払を拒絶す

ることができるものではない。

○4 正しい。3で見たように、賃貸人は、賃貸物の使用及び収益に必要な修繕

をする義務を負う(民法606条1項)。そして、建物の賃貸人が賃貸物の保存に

必要な修繕をするときは、賃借人は、これを拒むことはできないとされる(同2項)。

よって、賃貸人が建物の保存に必要な修繕をするときは、賃借人は使用収益に

支障が生じても、これを拒むことはできないのである。保存行為が賃借人の意思

に反し、かつ、賃借人が賃借した目的を達成できないときは、賃借人は、契約を

解除することができるという規定(民法607条)があるので、賃借人としては、これ

で対抗するしかないのである。

【問 9】 正解 1

○1 正しい。Aの使用人Bの不法行為により、Cが損害を受けており、Aは、Cに

対して事故によって受けたCの損害の全額を賠償する責任を負う。使用者責任

である(715条1項本文)。ただし、設問は、Dにも過失があり、BDの共同不法行

為であり(民法719条)、この場合、Aは、BとDの過失割合に従って、Dに対して

求償権を行使することができる。共同不法行為の場合、被害者に対しては、各

不法行為者は、全額の賠償責任を負うが、損害を賠償した不法行為者は、他の

不法行為者に対し、その過失の割合に応じて、求償できるのである。

×2 誤り。Aが、Dに対して事故によって受けたDの損害の全額を賠償した場合

(使用者責任である)、Aは、被用者であるBに対して求償権を行使することが

できる(民法715条3項)。必ずしも全額求償できるとは限らない(判例)。

×3 誤り。Cは、BとDに対して共同不法行為者として(民法719条)、損害賠償

を請求することができる。

×4 誤り。Dは、Bに対しても損害賠償を請求することはできる(民法709条)。

一般の不法行為責任である。2でも見たように、Dは、Aには使用者責任、Bに

は一般の不法行為責任を追及することができる。もし、ABに損害があれば、

ABは、Dに対して損害賠償ができる(民法709条)。共同不法行為者間でも、

損害賠償の請求ができることに変わりはない。

【問 10】 正解 2

×1 誤り。Aが死亡した場合、相続人は、BCE(Dの代襲相続)Fである。法定

相続分は、Bは配偶者とし2分の1、CEFは2分の1を平等に相続するから、そ

れぞれ6分の1ずつ相続する。EはDの持分をそのまま相続し、前妻との嫡出

子Fは、後妻との子と平等に相続することに注意。

○2 正しい。相続には、指定相続と法定相続がある。指定相続は、相続人が

遺言で相続分を指定することである(民法902条1項本文)。この指定がなけ

れば、法定相続が行われる(民法900条)。また、遺産の分割には、被相続人

が遺言で分割の方法を定める(同時に相続分の指定 → 法定相続分を超えて

いる場合)ことができる(民法908条)。これを指定分割という。その他に協議に

よる分割と、家庭裁判所の審判による分割がある。被相続人Aが生前、A所有

の全財産のうち甲土地について相続人であるCに相続させる旨の遺言をしてい

た場合、それが遺贈なのか相続分の指定なのかが争われていた。最高裁判

(平成3年4月19日)は、「遺言書の記載から、その趣旨が遺贈であることが

明らかであるか又は遺贈と解すべき特段の事情がない限り、当該遺産を相続

人をして単独で相続させる遺産分割の方法が指定されたと解すべきであるとし

た。この問題は、Cが甲土地を取得できることについては問題ない。遺贈として

取得するのか、相続として取得するのかという争いであることに注意。

 ここで注意してほしいのは、遺贈は贈与と同じように、登記をしなければ第三

者に対抗できないが、相続であれば、登記を具備しなくても第三者に対抗でき

るし、相続であれば単独で登記の申請ができるなどの違いがある。

×3 誤り。遺言者(A)が、特定の相続人(D)に全財産を相続させる旨の遺言し

ていた場合に、Aより先にDが死亡した場合、この遺言の効力が代襲されるかと

いう問題があり、従来から争われていた。最高裁判所(平成23年2月22日)は、

原則として、代襲相続の規定は適用されないとした。つまり、「相続させる遺言」

について、遺産分割の方法の指定と解したうえで、代襲を否定したのである。2

で見たように、それが遺贈と解されるものであれば、代襲されないのはいうまで

もない。

×4 誤り。2で見たように、遺言書に遺贈である旨が明確にされているときは、

遺贈とみなされるので、Aが生前、A所有の全財産のうち甲土地についてFに

遺贈する旨の意思表示をしていたときは、Fは相続分とは別に、当該甲土地を

遺贈によって取得する。相続人だから遺贈を受けられないというものではない。

【問 11】 正解 4

×1 誤り。賃借人が賃貸人に無断で賃借物を第三者に使用又は収益をさせ

ると、賃貸人は、賃貸借契約を解除することができる(民法612条2項)。定期

建物賃貸借契約の場合でも変わりはない。しかし、判例は、無断譲渡・転貸が

(AB間の)信頼関係を破壊しないような特段の事情がある場合には、賃貸人A

は、AB間の賃貸借 契約を解除することができないとしている。

×2 誤り。適法な建物の転貸借がある場合、AB間の賃貸借が期間の満了又

は解約の申入れにより終了すべきときは、Aから転借人Cへその旨を通知しな

ければ、Cに対抗できない(借地借家法34条1項)。定期建物賃貸借契約の場

合でも変わりない。設問は、Bの債務不履行を理由にAが賃貸借契約を解除し

た場合であるので、この通知は不要とされるので(判例)、この通知をしなくても、

AはCに対して甲建物の明渡しを請求することができる。

×3 誤り。AB間の賃貸借契約が期間満了で終了する場合、1で述べたように、

Aから転借人Cへその旨を通知すれば、AB間の契約終了をCに対抗できる。A

B間は定期建物賃貸借契約であり、期間が到来すると契約は終了する。正当事

由は問題にならない。

○4 正しい。借地借家法第32条第1項は、建物賃貸借契約において、事情の変

更による賃料の増減請求権を認めている。ただし、一定期間増額しないという特

約があれば、その期間内は増額できないことになっているが、減額しない特約を

してもその特約は無効と解されている。ところが、定期建物賃貸借契約について

は、賃料の改定について特約(増減を問わない)がある場合には、借地借家法第

32条第1項の規定を適用しないとして、特約を優先させている(借地借家法38条

7項)。よって、賃料の改定について特約がある場合には、経済事情の変動によっ

てBのAに対する賃料が不相当となっても、BはAに対して借地借家法第32条第

1項に基づく賃料の減額請求をすることはできないということになる。

【問 12】 正解 3

×1 誤り。借地借家法が適用されのは、建物所有を目的とする土地の賃貸借契

約に適用されるものであり(借地借家法1条)、ゴルフ場経営を目的とする土地賃

貸借契約については、借地借家法は適用されない。たとえ、一部に建物があって

も、借地の主たる目的が建物所有でなければ借地借家法の適用はない。

×2 誤り。借地権の存続期間が満了する際、借地権者が契約の更新請求した場

合、建物がある場合に限り、従前の契約と同一条件で契約が更新されたものとみ

なされる(借地借家法5条1項本文)。ただし、借地権設定者(地主)が遅滞なく異

議を述べたときは、この限りではないとされる(同ただし書)。しかし、借地権設定

者の異議は、正当事由が必要とされる(借地借家法6条)ので、遅滞なく異議を述

べればそれだけで借地契約が当然に終了するものではない。

○3 正しい。土地は一筆ごとに一個の不動産として登記され、対抗要件も一筆ご

とに判断される。借地借家法では、借地権の登記(借地である土地の登記簿の乙

区欄に登記される)がなくても、借地権者が借地上に登記のある建物を所有して

いれば、借地権の対抗要件を満たすとされる(借地借家法10条1項)。二筆の土

地のうち、登記ある建物がない土地については、借地借家法第10条第1項によ

る対抗力は及ばないことになる。

×4 誤り。借地権の存続期間が満了する前に建物が滅失し、借地権者が残存

期間を超えて存続すべき建物を建築した場合、借地権者が再築に承諾を与えた

場合には、原則として、承諾のあった日又は建物再築のいずれか早い日から20

年間契約期間が延長される(借地借家法7条1項)。また、借地権者から借地権設

定者に対して再築の通知があった場合には、借地権設定者が2ヶ月以内に異議

を述べなかった場合も同様である(借地借家法7条2項)。設問のように、借地権

者から再築の通知がないのに、借地権設定者が単に異議を述べないからといっ

て、20年間の延長が認められるものではない。

【問 13】 正解 1

×1 誤り。区分所有者の承諾を得て専有部分を占有する者(賃借人使用借人な

ど)は、会議の目的たる事項につき利害関係を有する場合には、集会に出席して

意見を述べることができる(区分所有法44条1項)。しかし、議決権を行使すること

はできない。

○2 正しい。集会は管理者が招集する(借地借家法34条1項)。一定数の区分所

有者の請求によって管理者が集会を招集する場合もある(同3項)。いずれにして

も管理者が集会を招集した場合には、規約に別段の定めがある場合及び別段の

決議をした場合を除いて、管理者が集会の議長となる(区分所有法41条)。一定

少数の区分所有者が集会を招集することもあるが(区分所有法34条4項、5項)、

この場合には、原則として集会を招集した区分所有者の一人が議長となる(区分

所有法41条)。

○3 正しい。管理者は、集会において、毎年一回一定の時期に、その事務に関す

る報告をしなければならない(区分所有法43条)。

○4 正しい。共有部分は、区分所有者全員の共有に属する。ただし、一部共用部

分は、これを用すべき区分所有者の共有に属する(区分所有法11条1項)。

【問 14】 正解 3

○1 正しい。表題部所有者(甲区欄に所有権の登記がなされると表題部所有者

は抹消される)又は所有権の登記名義人が表示に関する登記の申請人となるこ

とができる場合において、当該表題部所有者又は登記名義人について相続その

の一般承継(合併など)があったときは、相続人その他の一般承継人は、当該

表示に関する登記を申請することができる(不登法30条)。

○2 正しい。共有物分割禁上の定めに係る権利の変更の登記の申請は、当該

権利の共有者である全ての登記名義人が共同してしなければならない(不登法

65条)。各共有者は、いつでも共有物の分割を請求することができる。ただし、

5年を超えない期間内は分割をしない旨の契約をすることができる(民法256条

1項)。そして、この不分割の特約は登記をしなければ第三者に対抗できないと

されている(民法177条)。この不分割の登記のことである。

×3 誤り。所有権の保存登記(甲区欄に最初になされる所有権の登記のこと)の

申請は、表題部所有者又はその相続人や所有権を有することが確定判決によっ

て確定された者等でなければできない(不登法74条1項)。単に表題部所有者か

ら所有権を取得したからといって所有権の保存登記はできないのが原則である。

ただし、区分所有建物については、表題部所有者から所有権を取得した者も保

存登記の申請ができる。この場合、当該建物が敷地権付き区分建物であるとき

は、当該敷地権の登記名義人(通常は区分建物の表題部所有者(分譲主)で

ある)の承諾を得なければならないとされている(不登法74条2項)。

○4 正しい。所有権に関する仮登記に基づく本登記は、登記上の利害関係を有

る第三者がある場合には、当該第三者の承諾があるときに限り、申請すること

ができる(不登法109条1項)。なお、所有権以外の仮登記に基づく本登記の申請

については、この規定は適用されないことに注意。例えば、抵当権の仮登記を本

登記にする場合には、承諾なくして本登記の申請ができるのである。

14年02月20日 14時18分42秒
Posted by: mansyonkanrisi

 先日古いパソコンが故障したので、新しいパソコンに変更した。ところが、

そのせいで、前にブログで公開した平成25年度の宅建試験の解説が改行

されずに、ずっと繋がったままになってしまい、大変読みずらくなってしまっ

た。宅建業法の解説は何ら変更されていないのに、権利関係と法令その他

は変更されてしまった。ワードから同じように貼り付けたのに、なぜ変になっ

たのか、さっぱり分からん。

 新しく入力して改行したら、勝手に一行開いてしまう。これも分からん。

これを参考にして下さっている方々には大変ご迷惑をおかけしました。

再び、権利関係を二回に分けて公開します。

 今年の権利関係の問題は難しかった。宅建用のテキストに載っていない

問題や、過去に出題されたことのない問題を正解の肢にするなど、点数を

取りにくくしていた。したがって、14問中7問正解すれば十分だ、その代わ

宅建業法の問題はちゃんと勉強していれば全問とれる問題だった。

 平成 25年度の合格点は33点である。前年度も33点であった。しかし、前

度は宅建業法が難しかった。いきなり個数を数えさせる問題が5問出題され、

中身も難しかった。今回は、個数を数えさせる問題は4問出題されたが、比較

的やさしい問題だった。今年度は、権利関係が難しかったというのは既に指摘

したが、プラスマイナ スで合格点が同じになった。問題が難しかったとか易しか

ったとかは何で判断するかというと、それは、過去に出題された問題が正解の肢

に多かったかどうか。基本的な問題を正解の肢にした問題が多かったかどうかと

か、いろいろなことを総合的に判断する。

 しかし、過去問(できれば10年分ぐらい)をしっかりやっていれば、合格点は軽く

取れる。過去問をやるというのは、問題の肢4つすべてを納得のいくまで理解す

るということである。ということは何回も繰り返しやるということである。単に問題を

解いて答え合わせをしてお終いでは、過去問をやったことにはならない。ただし、

権利関係(特に民法)の問題は、範囲が広く、時にとんでもない難 しい問題が出

題される。その他どうでもよい問題やテキストに書いていない問題などを含める

と、50問中5問ぐらいはある。これらの問題はやる必要がな い。このような問題

をやることは時間の無駄である。

 くれぐれも自覚してほしいのは、何も難しい問題が解けなかったから不合格に

なったということではない。基本的な問題や過去に何度も出題された問題を 落と

しているから不合格になったということである。

エースビジネス学院   民本廣則

【問 1】 正解 2

×1 規定されていない。意思表示に法律行為の要素の錯誤があった場合は、

その意思表示は無効となる(民法95条本文)。取り消すことができるとは規定

されていない。

○2 規定されている。贈与者は、原則として瑕疵担保責任を負わない(民法

551条1項本文)。ただし、贈与の目的である物又は権利の瑕疵又は不存在

を知りながら受贈者に告げなかった場合は、その限りではないと規定されて

いる(民法551条1項ただし書)。

×3 規定されていない。売買契約の目的物に隠れた瑕疵がある場合には、

買主は、売主に対し瑕疵担保責任を追及できるが、その内容は、損害賠償と

目的達成できないときの契約解除であり、代金の減額を請求することができ

るという規定はない(民法570条、566条1項)。

×4 規定されていない。多数の相手方との契約の締結を予定してあらかじめ

準備される契約条項の総体であって、それらの契約の内容を画一的に定める

ことを目的とするものを約款と定義される。この約款の定義については、民法

に規定されていない。しかし、法制審議会では、この約款について、民法に新

設することが検討されている。

 この約款に基づく契約の場合は、内容が画一的に定まっているので、本人の

利益を害するおそれがなく、双方代理等の禁止の規定は適用されないと解され

ていることに注意。

【問 2】 正解 4

×1 誤り。私権の享有は、出生に始まる(民法3条1項)。つまり、出生すると人

として私法上の権利義務の主体となる。私権とは、民法(私法)上の権利であり、

物を所有する権利や損害賠償請求権など多数の権利をいう。乳児でも不動産

を所有することができるのである。

 法律は私法と公法に区別できるが、公法上の権利を公権という。公権には国家

の刑罰権や国民の参政権(選挙権・被選挙権)などがある。参政権などは一定の

年齢以上の者にしか認められていない。

×2 誤り。営業を許可された未成年者は、その営業に関しては、成年者と同一の

行為能力を有する(民法6条1項)。したがって、営業を許可された未成年者が、そ

の営業のための商品を仕入れる売買契約を単独で有効に締結することができる。

×3 誤り。男は18歳 に、女は16歳になれば婚姻することがで きる(民法731

条)。そして、未成年者が婚姻するには、父母の同意が必要であるが(民法737条

1項)、父母の一方が同意しないときは、他の一方の同意だけで足りるとされる(同2

項)。必ず父母双方の同意が必要というのは、誤りである。

 なお、父母の一方が知れないとき、死亡したとき、又はその意思を表示すること

ができないときも、他の一方の同意だけで足りるとされる(同2項)。父母双方が知

れないとき、死亡したとき、又はその意思を表示することができないときは、同意

なくして婚姻できると解すべきである。

○4 正しい。親権者は、子の財産を管理し、またその財産に関する法律行為につ

いてその子を代表(代理)する(民法824条本文)。しかし、親権を行う者とその子

の利益が相反する場合には、代理権はなく、子のために家庭裁判所が特別代理

人を選任する(民法826条1項)。また、親権者が数人の子に対して親権を行う場

合、その一人の子と他の子との利益が相反するときは、一方の子のために、特別

代理人を選任しなければならない(同2項)。したがって、CとDの親権者である母

EがCとDを代理してBとの間で遺産分割協議を行っても、無権代理として無効で

ある。しかし、子が成年に達した後は追認することができると解されている(民法

113条、判例)。設問は子達が有効な追認がない限り無効であるというのは、正

しい。

【問 3】 正解 4

○1 正しい。甲土地が他の土地に囲まれて公道に通じない場合、甲土地の所有

者Aは、公道に出るために甲土地を囲んでいる他の土地を通行できる(民法210

条1項)。いわゆる囲にょう地通行権である。この場合、甲土地を囲んでいる他の

土地を自由に選んで通行できるわけではなく、通行の場所及び方法は、通行権を

有する者のために必要であり、かつ、他の土地のために損害が最も少ないものを

選ばなければならないとされている(民法211条1項)。

○2 正しい。甲土地が共有物分割によって公道に通じなくなった場合、Aは、公道

に出るためには、他の分割者の土地のみを通行することができる。そして、通行の

ための償金を支払う必要もない(民法213条1項)。この場合、土地の分割のとき、

あらかじめ通路を確保して分割すべきであり、それをせずに、他の土地を通行でき

るとするのは、不当だからである。

○3 正しい。囲にょう地通行権は、他の土地に囲まれて公道に通じない甲土地の

ために法律が認めた当然の権利であり、契約によるものではない。Aが、他人が

所有している土地を通行するために当該土地の所有者と賃貸借契約を締結した

場合、契約の効果として賃借権が発生し、Aは当該土地を通行することができる。

甲土地が公道に通じているか否かにかかわらず、契約を締結すれば、契約の効

果として、通行できるのである。

×4 誤り。この問題は、通行地役権の問題である。通行地役権は、他人との契

約により、他人の土地を通行できる権利であり、物権の一種である。3の賃借権

は、賃貸借契約という債権契約により、通行できる権利が発生するが、地役権は、

物権契約により、通行地役権が発生する。この通行地役権は、契約によらずに時

効によっても取得することができる。ただし、時効によって通行地役権を取得する

ためには、「継続的に行使され、かつ、外形上認識がすることができるものに限る」

という要件がある(民法283条)。ここでいう継続的に行使されというのは、承役地

たるべき土地の上に通路の開設があっただけでは足りず、その開設が要役地所

有者によってなされたことを要するというのが、判例である。設問は、甲土地の隣

の所有者が自らが使用するために当該隣接地内に通路を開設しており、時効

取得を主張する要役地の所有者Aが通路を開設しているわけではないので、Aは

時効によって通行地役権を取得できないのである。

 設問は、他人の土地を通行できる場合の民法の規定を幅広く聞いている。1と2

は、相隣関係の囲にょう地通行権の問題、3は、隣地の所有者と賃貸借契約を締

結してその土地を通路として利用する方法があるということ。4は、地役権の時効

取得の問題である。その前提として契約(物権契約)によって、隣地を通行できる

地役権という用益物権というものがあるということの知識が必要である。1、2、3

は基本的な問題であるが、4は難しい問題である。消去法で4を正解とすべきであ

るが、それにしても難しい問題である。

【問 4】 正解 4

×1 誤り。賃借人が造作の買取請求権を行使した場合、賃貸人と賃借人の間で

造作について売買契約が成立した場合と同じ関係が生ずる。お互いに同時履行

の抗弁権を取得し、また、賃借人は、造作について留置権を取得する(民法295

条1項)。賃借人の造作買取代金債権は、造作に関して生じた債権だからである。

この場合、造作とともに建物についても留置できるかといえば、判例は否定する。

賃借人は、建物から取り外して造作についてのみ留置することができるのである。

建物を留置することはできない。

 ここで注意してほしいのは、賃借人が建物に費用(必要費・有益費)をかけた場

合、賃借人は、その費用の返還請求権を有する場合があるが、賃貸人がその費

用を支払うまでは、賃借人は、建物について留置権を有するというこである。造作

は建物とは別個独立の物であるが、費用は建物そのものにかけたものだからで

ある。

×2 誤り。第1の買主の損害賠償請求権は、売主の債務不履行に基づく債権で

あり、留置権が発生する「その物に関して生じた債権」ではないから、当該不動産

を留置することはできない。また、この場合、留置権を認めると、不動産の二重譲

渡の場合に登記をもって対抗要件とする考えにも矛盾する。

×3 誤り。1で見たように、費用については、建物について留置権が発生すると言

ったが、それはあくまでも、賃貸借契約の継続中に費用を支出した場合である。留

置権は、占有が不法行為によって始まった場合には、適用しない(民法295条2項)

とされており、建物の賃貸借契約が賃借人の債務不履行を理由に解除された後に、

賃借人が建物に関して有益費を支出した場合にも、この規定の趣旨から留置権を

否定するのが、判例である。この場合、占有が不法行為によって始まった場合では

ないが、民法295条2項の規定の趣旨を類推適用しているのである。

○4 正しい。建物の賃借人が建物に関して必要費を支出した場合、賃借人は、そ

の建物については、今まで見たように、留置権が認められるが、その敷地について

は、留置権は認められない。しかし、判例は、建物の留置権の反射的な効果として、

敷地を占有できるが、その敷地の賃料相当分については、不当利得として、敷地所

有者に返還しなければならないという。そして、建物所有者ではない土地の所有者

からの土地の明渡請求に対しては、その敷地を留置することはできないという。

この問題も非常に難しい問題である。土地と建物は、別個の物であり、建物に対す

る留置権は土地には及ばないが、建物を留置するためには、敷地から取り外して留

置するわけにはいかないので、その反射的な効果として、敷地を占有できるとしてい

る。しかし、敷地の所有者が建物の所有者と異なる場合に、その者からの土地明渡し

は認めざるを得ないのである。

【問 5】 正解 2

×1 誤り。債権者が抵当権の実行として担保不動産の競売手続をする場合には、

被担保債権の弁済期が到来している必要がある。物上代位も抵当権の実行の一

つであり弁済期が到来している必要がある。したがって、対象不動産に関して発生

した賃料債権に対して物上代位をしようとする場合には、被担保債権の弁済期が

到来している必要はないというのは、誤り。

○2 正しい。借地上の建物に抵当権を設定した場合、特段の事情がない限り、抵

当権の効力は当該建物のみならず借地権についても及ぶ。建物所有のために土

地の借地権は、その建物所有権に付随し、これと一体となって一つの財産的価値

を形成しているものだからである(民法370条本文、判例)。

×3 誤り。抵当不動産の不法占有者に対しては、抵当権は、抵当権設定者に代

位して、または抵当権に基づいて直接、妨害排除請求権を行使することができる

(判例)。

×4 誤り。抵当権について登記がされた後に、各抵当権者の合意により抵当権の

順位を変更することができる。ただし、利害関係人の承諾が必要であるとされる(民

法374条1項)。

【問 6】 正解 4

×1 誤り。債務を債務者以外の第三者が弁済した場合、弁済した者は債務者に

償することができる。この弁済者の求償権を確保するために、弁済者は、債権者が

有する権利を代位することができる(民法499条、500条)。これを弁済による代位

(または代位弁済)という。そして、代位の利益を受ける者が数人いる場合について、

その保護すべき必要の強弱に応じて代位の順位と割合を定めている。保証人と物

上保証人との間では、その頭数に応じて代位する(民法501条5号本文)。したがっ

て、設問では、保証人Cは、物上保証人D及びEに対して、1,000万円を限度で求

償てきるにすぎない。

×2 誤り。A銀行がDの不動産の抵当権を実行して債権全額を回収した場合、物

上保証人Dは保証人Cに対して、1で見た通り、500万円を限度として求償するこ

とができる。

×3 誤り。保証人は、あらかじめ抵当権の登記にその代位の付記登記をしなけれ

ば第三取得者に代位できないとされる(民法501条1号)。しかし、保証人がまだ弁

済もしていないのに、あらかじめ代位の付記登記を保証人に求めるのは妥当では

なく、保証人が弁済したときは、代位の付記登記をしなければ、その後の第三取得

者に対抗できないと解されている。第三者がDの所有する担保不動産を買い受けた

後(第三取得者が出現した後)、保証人Cが弁済した場合には、保証人は代位の付

記登記をしなくても、当該第三者に対して債権者A銀行に代位することができる。

○4 正しい。第三取得者は保証人に対して代位しないとされている(民法501条2

号)。第三取得者は、債務者が弁済しない限り担保権を実行されるのを覚悟すべき

であり、保証人があっても安心すべきではないという趣旨である。そうすると、Eの担

保不動産を買い受けた第三者(第三取得者)がA銀行に対して債権全額を弁済して

も、当該第三者は、保証人Cに対して、求償できないということになりそうである。し

かし、債務者Bが抵当権を設定した場合に、その抵当目的物を取得した第三取得

者であれば、この条文通りに考えてもよい。ところが、設問は、物上保証人Eから担

保不動産を取得した第三者(これも第三取得者であることに変わりはない)である。

この場合には、条文の立法趣旨からも文言通りに解釈するわけにはいかない。こ

の場合の第三取得者に保証人を当てにすべきではないということは言えない。

上保証人は保証人に求償できるのに、物上保証人から買い受けた者は保証人に

求償できないというのは、著しくバランスを欠くことになるからである。したがって、

ここでいう第三者は、物上保証人と同じように、保証人Cに対して、その割合に応じ

て求償することができるというべきである。

 この問題も非常に難しい問題である。試験直後には、各学校の解答も一致しなか

った。4を条文通りに解釈して、誤りとしたものもあった。4を誤りとすると、他を正解

にしなければならないので、1や3を正解とするものもあった。しかし、これは明らか

に誤りである。この肢4については、明確な判例もなく、これについて、はっきりと書

いてある専門書も少ない。このような問題を正解の肢として出すのはどうかと思う。

とにかくこの年の民法の問題は難しい問題が多かった。

【問 7】 正解 3

○1 正しい。保証人が期間の定めのある建物の賃貸借の賃借人のために保証契約

を締結した場合は、賃貸借契約の更新の際に賃貸人から保証意思の確認がなされ

ていなくても、反対の趣旨をうかがわせるような特段の事情がない限り、更新後の賃

借人の債務について保証する旨を合意したものと解される。判決文(平成9年11月

13日最高裁判例)の通りである。

○2 正しい。保証人が更新後の賃借人の債務についても保証の責任を負う趣旨で

合意した場合には、保証人は未払い賃料の支払義務を負う。1は賃貸人から保証意

思の確認がない場合も、特段の事情がない限り更新後も保証する旨が合意されたと

解されているが、2は更新後について保証する合意がなされているのであり、保証す

る責任がある。

×3 誤り。保証の範囲は、主たる債務に関する利息、違約金、損害賠償その他債務

に関する従たるすべてのものに及ぶ(民法447条1項)。したがって、賃料に限らず賃

借人が賃借している建物に対する不法行為によって発生した損害賠償債務にも保証

人の責任は及ぶ。これは判決文と関係なく、保証の基本的な問題である。判決文と関

係なく正解に至る問題である。

○4 正しい。判決文は、賃貸人において保証債務の履行を請求することが信義則に

反すると認められる場合を除き、保証人は更新後の賃借人の債務について保証の責

任を負うと言っており、賃貸人において保証債務の履行を請求することが信義則に反

すると認められるときは、保証人は責任を負わない。例えは、更新前において、既に賃

料の延滞が相当あり、このことについて、賃貸人が、ことさら保証人に告げずに更新し

たような場合には、更新後の賃借人の債務については、保証人は責任を負わないで

あろう。

エースビジネス学院   民本廣則

http://www.acebusinessgakuin.com 

14年02月19日 19時40分49秒
Posted by: mansyonkanrisi

【問 11】 正解 1

×l 不適切。時効の利益は、あらかじめ放棄することができない(民法146条)。あらか

じめ放棄を認めると金を貸す債権者等は、強い立場にあり、貸す条件として時効の主張

をしないという特約をするおそれがあり、それでは時効の制度はほとんど無意味になるか

らである。時効が完成すると放棄は自由にできるし、時効の期間がまだ完成しない間でも、

既に経過した期間を放棄することもできる。管理組合の規約において、「各区分所有者は

管理費の債務については消滅時効の主張をすることができない」旨の定めは、あらかじめ

時効の利益を放棄する特約であり、無効となる。だから、滞納区分所有者は、消滅時効が

完成すると、時効の主張をすることができる。

〇2 適切。破産手続開始の決定(破産法30条)を受けた後、免責の決定(破産法252条)

を受ければ(自己破産の場合、特に問題がなければ破産開始の決定から1ヵ月ぐらいの後

に免責の決定がなされる)、債務者は一定の債務を除いて債務を免れる(破産法253条)。

この場合に免れる債務は、「破産手続開始前」の原因に基づいて生じた財産上の請求権で

ある(破産法2条5項)。「破産手続開始決定の日の翌日以降」の債務(管理費)については、

免責の効果は及ばないので、それについては支払義務を免れるものではない。

〇3 適切。専有部分について賃貸借契約が締結され、当該賃貸借契約において、管理費

の支払義務者を賃借人と定めても、それだけで債権者(管理組合)を拘束しない。債権者と

しては、自分の意思に反して債務者が変更することを認めるわけにはいかないのである。

賃貸人と賃借人の契約としては有効であり、賃借人が代わりに支払わなければ、賃貸人に

対し債務不履行の責任を負う。

 ただし、区分所有者と賃借人と管理組合の三者の契約で区分所有者の債務(管理費)を

賃借人が引き受けるという契約ができる。免責的債務引受契約というものである。これに

よると、債権者は賃借人にしか請求できず、区分所有者に対しては請求できない。債権者

が契約に加わらなくても、その承諾があれば(設問でいう特段の事情である)、同じように

債権者はこの契約に拘束さる。

〇4 適切。消滅時効は、権利を行使することができる時から進行する(民法166条1項)。

管理費の各支払い期日が管理組合の権利を行使できる期日であり、消滅時効の起算日

は、管理費の各支払期日が経過した時である。

【問 12】 正解 3

×ア 不適切。マンション管理業者は、管理組合の事業年度終了後、契約で定めた期限

内に、管理組合に対して、当該年度における管理事務の処理状況及び管理組合の会計

の収支の結果を記載した書面を交付し、「管理業務主任者をして」、報告をさせなければ

ならない(標準管理委託契約9条1項)。適正化法77条の「管理事務の定期報告」を受け

た規定である。

〇イ 適切。マンション管理業者は、毎月末日までに、管理組合に対し、前月における

管理組合の会計の収支状況に関する「書面を交付」しなければならない(標準管理委託契

約9条2項)。管理組合の承諾があれば、書面の交付に代えて電磁的方法によることもで

きる(規則87条5項、別表1の1(1)③)。この2項は、書面の交付義務を定めているだけで、

報告(説明)義務については規定していない。ただし、管理業者は、管理組合から請求が

あると、管理事務の処理状況の他、この会計の収支状況についても報告(説明)をしなけ

ればならないとされている(標準管理委託契約9条3項、別表1の1(1)③)。ただ、この

報告は、管理業務主任者以外の者に行わせてもよい。

〇ウ 適切。イで述べたとおりである。管理業者は、管理組合から請求があると、管理

事務の処理状況の他、この会計の収支状況についても報告(説明)をしなければならな

いとされている(標準管理委託契約9条3項、別表1の1(1)③)。この報告は、管理業務

主任者以外の者に行わせてもよい。

〇エ 適切。管理事務の定期報告(1項)、会計の収支状況に関する書面を交付(2項)、請

求があるときの報告(3項)の場合に、管理組合は、管理会社に対し、管理事務の処理状況

及び管理組合の会計の収支に係る関係書類の提示を求めることができるとしている(標

準管理委託契約9条4項)。報告等の正確性・信頼性を担保するためである。書類の提示

をするのは、管理業務主任者である必要はない。

 以上より、適切なものは、イ、ウ、エの三つであり、3が正解。

【問 13】 正解 1

〇ア 適切。建物の建替えに係る合意形成に必要となる事項の調査を行うための費用は、

修繕積立金から取り崩すことになっている(標準管理規約28条1項4号)。そして、管

理組合は、第28条第1項に定める業務(修繕積立金から取り崩すことができる業務)に

あてるため必要な範囲内において借入れをすることができる(標準管理規約63条)。ちな

みに、この借入金については、修繕積立金をもってその償還に充てることができること

になっている(標準管理規約28条3項)。標準管理規約では、通常の管理に要する経費

(管理費)に充てるための借り入れは認めていないことに注意。

〇イ 適切。駐車場使用料その他の敷地及び共用部分等に係る使用料は、それらの管理

に要する費用に充てるほか、修繕積立金として積み立てるとされている(標準管理規約

29条)。

×ウ 不適切。収支決算の結果、管理費に余剰を生じた場合には、その余剰は翌年度に

おける管理費に充当することになっている(標準管理規約61条1項)。繕積立金に充当

することはできない。

〇エ 適切。管理費等に不足を生じた場合には、管理組合は組合員に対して第25条第

2項に定める管理費等の負担割合により、その都度必要な金額の負担を求めることがで

きる(標準管理規約61条2項)。管理規約で定めているので、一々総会の決議は必要

でない。

不足額の負担を確認的に総会の決議にかけても、あえて不当ともいえないが、それ

はあくまで確認的なものである。そういう意味であえて不適切とは言えないという

だけのものである。

 以上より、不適切なものは、ウの一つであり、1が正解。

 エについて、平成24年度の【問13】の肢1でも同じような問題が出題されている。

どうも、この問題の出題者は、管理費等に不足を生じたときに、組合員に負担を求

める場合には、総会の決議が必要だと誤解しているのではないかと思われる。そう

すると、「管理組合は、管理費等に不足が生じた場合に、総会の決議がなければ、

その都度必要な金額の負担を組合員に求めることができない。」という肢でも、適切

と考えているのではないか。

 しかし、これは明らかに誤りである。管理規約で定めているので、一々総会の決

議は必要でない。

 中には、管理費等の額並びに賦課徴収方法については、標準管理規約第48

条3号で総会の議決事項だから、不足額の徴収についても総会の決議が必要だ

と考えている人がいるようだ。確かに、管理費・修繕積立金をいくらにするか、その

徴収方法(銀行振込みとか、引き落しとか)はどうするかということは、総会の決議事

項である。しかし、管理費等の不足額というのは、管理組合が第三者に負担する

債務である。管理費等と明確に区別しなければならない。その債務にあてるため

に負担額を求めることは、管理費等の徴収ではない。管理費と管理委託費(これ

は管理組合の債務である)との違いと同じようなものだ。つまり、不足額というのは、

管理組合の第三者に対する債務であり、全員が負担割合に応じて債務を負うので

あり(区分所有法29条1項、53条1項)、その都度必要な負担額を支払う義務があ

る。それを規約で、組合が各組合員から徴収して支払いにあてることができると定

めているのである。

 このように4分の3の決議により成立した規約で定めているのに、総会の決議

(過半数)で否決したら、組合は徴収できないということになるのか。これは明らか

に不当であろう。

 組合に対する債権者(管理会社や大規模修繕をした会社など)は、その不足額

について、各組合員に対して、その負担割合で、支払いの請求や強制執行ができ

る。しかし、それは大変面倒なことだから、組合が責任をもって徴収すると規約で定

めているのである。だから、このような規約の定めのある組合とは、安心して取引が

できるということになる。

【問 14】 正解 2

〇1 適切。修繕積立金の保管及び運用方法を決めるには、総会の決議によらなけれ

ばならない(標準管理規約48条8号)。

×2 不適切。長期修繕計画の作成等のために劣化診断(建物診断)に要する経費に

ついては、管理組合の財産状態に応じて管理費又は修繕積立金のどちらかでも取り崩

して充当できる(標準管理規約32条関係のコメント④)。

〇3 適切。共用部分等に係る火災保険料その他損害保険料については、管理費から

充当される(標準管理規約27条5号)。修繕積立金を取り崩して充当してはならない。

〇4 適切。共用設備の保守、維持及び運転に要する経費については、管理費から充

当される(標準管理規約27条3号)。修繕積立金を取り崩して充当してはならない。

【問 15】 正解 1

共用非常照明修理工事代75,000円、排水管塗装工事代368,000円、壁

補修工事代21,000円の合計464,000円は修繕費として借方に計上する。

防犯カメラ取替(取付費含む)代670,000円は什器備品として借方に計上する。

消防設備不備箇所改良工事代、エレベーター改良工事代、エレベーター工

事に伴う部品交換代は3月末現在完成していないが、その一部支払額(2,500,000円)

を前払い金として、借方に計上する。

4月支払い予定の壁補修工事代21,000円、防犯カメラ取替(取付費含む)代

670,000円の合計額691,000円は、未払金として貸方に計上する。

そして、2,943,000円を普通預金から支払っている。

 以上より、1が正解。

【問 16】 正解 2

発生主義によると、3月の時点では、管理委託費5月分とリース料4月分は発生し

ていない。したがって、これらについては、記載しない。

3月の時点では、電気料3月分と、水道料2~3月分は発生はしているが、支払い

をしていないので、未払金として計上すべきである。

 以上より、2が正解。

  エースビジネス学院   民本廣則

http://www.acebusinessgakuin.com

14年02月14日 20時24分06秒
Posted by: mansyonkanrisi

【問 7】 正解 4

×1 不適切。マンション管理業者は、管理員業務、清掃業務、建物・設備管理

業務の管理事務の全部又は一部を第三者に再委託することができるが、事務

管理業務については、一部の再委託はできるが、全部の再委託はできない(標

準管理委託契約書4条1項)。マンション管理適正化法74条で基幹事務につい

ては、一括再委託を禁止しているので、これを踏まえて規定されているのである。

×2 不適切。マンションの管理事務の対象部分とは、管理規約により管理組合

が管理すべき部分のうち、マンション管理業者が受託して管理する部分をいう。

この点は正しい。しかし、区分所有者が管理すべき部分は含まれない(標準管

理委託契約書2条、コメント①)。

×3 不適切。管理委託契約の有効期間が満了する日の3月前までに契約の更

新について申出があった場合において、その有効期間が満了する日までに更新

に関する協議がととのわないときは、管理組合及びマンション管理業者は、本契

約と同一条件で、期間を定めて暫定契約を締結することはできる(標準管理委託

契約書21条1項、2項)。

〇4 適切。マンション管理業者が、書面をもって注意喚起したにもかかわらず、

管理組合が承認しなかった事項に起因して、管理組合又は管理組合の組合員等

が損害を受けたとき、当該マンション管理業者は、その損害を賠償する責任を負

わない(標準管理委託契約書17条2号)。

【問 8】 正解 1

〇1 適切。当該組合員の負担に係る管理費及び修繕積立金等については、月額

並びに滞納があるときはその金額を書面をもって開示することになっている(標準

管理委託契約書14条1項1号)。

×2 不適切。マンションの修繕の実施状況については、書面をもって開示すること

になっているが(標準管理委託契約書14条1項3号)、専有部分は除かれる(同か

っこ書)。

×3 不適切。管理費等の改定の予定及び修繕一時金の徴収の予定並びに大規模

修繕の実施予定(理事会で改定が決議されたものを含む)がある場合には、書面で

開示することになっている(標準管理委託契約書14条関係コメント③)。

×4 不適切。マンション管理業者が提供・開示できる範囲は、標準管理委託契約書

14条(コメントを含む)に限られるのであり、宅地建物取引業者から求められたすべ

ての範囲ではない。

【問 9】 正解 2

〇ア 正しい。マンション管理業者がマンション管理適正化法上の処分(指示・業務停

止・登録の取消し)を受けたときは、マンション管理業者は、速やかに、書面をもって、

管理組合に通知しなければならない(標準管理委託契約書12条2項5号)。

×イ 誤り。マンションの管理組合の組合員がその専有部分を第三者に貸与したとき

も(標準管理委託契約書12条2項2号)、管理組合の役員又は組合員が変更したとき

も(同1号)、管理組合は、速やかに、書面をもって、マンション管理業者に通知しなけ

ればならない。

×ウ 誤り。マンション管理業者が銀行の取引を停止されたとき、若しくは破産、会社

更生、民事再生の申立てをしたとき、又は破産、会社更生、民事再生の申立てを受

けたときは、速やかに、書面をもって、管理組合に通知をしなければならない(標準管

理委託契約書12条2項6号、18条2項1号)。破産、会社更生、民事再生については、

自ら申立てをしたときも、第三者が申立てをしたときも、通知が必要である。

〇エ 正しい。マンション管理業者が商号又は住所を変更したときは、マンション管理

業者は、速やかに、書面をもって、管理組合に通知しなければならず(標準管理委託

契約書12条2項3号)、マンション管理業者が合併又は会社分割をしたときも(標準管

理委託契約書12条2項4号)、同様に通知しなければならない。

 以上より、正しいものの組み合わせは、ア、エであり、2が正解。

【問 10】 正解 3

〇1 正しい。時効の中断事由は、①請求、②差押え、仮差押え又は仮処分、③承認

である。滞納している区分所有者が、管理組合あてに滞納している事実を認める書面

を提出したときは、債務者が債務があることを自ら認めているので、承認として、時効

が中断する(民法147条3号)。

〇2 正しい。滞納している区分所有者が、破産手続開始の決定を受けた場合、管理

組合がその破産手続において債権の届出をしたときは、債権者が破産手続きに参加

して債権の支払いの請求(裁判上の請求の一つである)をしていることになるので、時

効が中断する(民法147条1号、152条)。ただし、債権者(管理組合)がその届出を取

り下げ、又は届出が却下されたときは、時効中断の効力は生じないことになっている。

×3 誤り。共同相続人間で遺産分割協議が調わないということは、時効中断事由の

請求でもないし、差押さえ等でないし、債務者が債務を承認しているわけでもない。時

効は中断しない。

〇4 正しい。管理組合が、滞納している区分所有者に支払請求訴訟を提起したとき

は、請求として(裁判上の請求)時効が中断する(民法147条1号)。しかし、訴えの却

下又は訴えを取り下げた場合は、時効が中断しなかったことになる(民法149条)。2の

破産手続きの場合の届出の取り下げ、又は届出が却下された場合と同じことになって

いることに注意。

14年02月13日 19時28分58秒
Posted by: mansyonkanrisi
【問 1】 正解 1
×ア 誤り。管理会社がる重要事項の説明義務を行う場合に、管理業務主任者を
して説明させなければならない(適正化法72条1項)。それは法定の業務である。
重要事項説明における管理会社と管理業務主任者との間で代理人とか復代理人と
かいう問題が出てくる余地は全くない。
〇イ 正しい。管理組合法人Aを代表する理事Cは、Aの代理人ではなく、Aの
代表者である。「代理」と「代表」は多くの共通点があるが、厳密には異なる。
代理の場合には、本人の行為と代理人の行為が考えられるが、代表の場合には、
代表者(機関)の行為のほか本人の行為というものは考えられず、代表者の行為
は即法人の行為とみなされる。したがって、不法行為の代理ということは認めら
れないが(代理は法律行為についてなされるから)、不法行為についての代表はあ
りうるのである。
 なお、この問題と直接関係はないが、区分所有者を代理するのは、管理組合法
人Aであり、その法人を代表するのが、代表理事である。代表理事は、法人を代
表するのであり、区分所有者の代理人でないことを、しっかりと理解すること。
×ウ 誤り。契約締結後に行為能力を喪失しても、その後に契約の効力が影響を
受けることはない。それは代表であろうが、代理であろうが、また、ある個人が
自分で契約した場合であろうが同じである。
 代理人は、行為能力者であることを要しないとされる(民法102条)。この規定
は、代表にも準用される。ということは、代表者Cが契約時に行為能力を喪失し
ていても、契約の効力には影響しない。つまり、契約は有効である。ただし、契
約時に「意思能力」を喪失していれば、代表行為は無効になることに注意するこ
と。
×エ 誤り。法律行為の要素に錯誤があれば、表意者に重大な過失がない限り、
その法律行為の無効を主張できる(民法95条)。代表においては、代表者の意思
(代理においては代理人の意思)で錯誤を判断する。管理業者がBかDかは要
素(法律行為の重要な部分)であると思われるので、Aは錯誤を理由に本件契
約の無効を主張できる。「取消し又は解除」できるという点が誤り。
 以上より、正しいものは、イの一つであり、1が正解。

【問 2】 正解 2
〇ア 適切。相続とは、人の死亡によってその人に属していた財産上の権利・
義務を受け継ぐことである。いわゆる包括承継(一般承継)である。区分所有
者の相続人に対して管理費の請求ができる。合併も包括承継である。
×イ 不適切。区分所有者から当該専有部分を賃借している者(占有者)は管理
費の支払義務はない。
〇ウ 適切。区分所有者は、マンションの共用部分、敷地等について他の区分所
有者に対して有する債権、規約や集会の決議に基づき他の区部所有者に対して有
する債権(管理費・修繕積立金等)について、区分所有者の特定承継人(売買や
贈与によって取得した者)に対しても行うことができる(区分所有法7条1項、
8条)。
×エ 不適切。2親等内の親族(兄弟姉妹や祖父母と孫など関係にある者)は、
マンションに同居しようがしまいが、管理費等について責任を負わない。夫婦・
親子関係でも同じこと。
以上より、不適切なものは、イ、エの二つであり、2が正解。

【問 3】 正解 3
×l 誤り。債務の弁済として給付をした者は、債務の存在しないことを知って
いたときは、その返還を請求できない(民法705条)。設問は、管理費月額を
15,000円であると誤認して支払っているので、その過払い分5,000万円につい
て返還請求できる。当事者の意思を無視して、次期の管理費として当然に充当
されるものではない。
×2 誤り。区分所有者が、5月末日に支払うべき管理費をその前の5月1日
に支払ったのであるから、期限前の弁済の問題である。これについて民法は、
その返還請求ができないとしてる(民法706条本文)。ただし、この場合、区分
所有者が錯誤によって期限前に支払った場合には、債権者(管理組合)は、こ
れによって得た利益を返還しなければならないとされていることに注意(同た
だし書)。
〇3 正しい。区分所有者Aが、他の区分所有者Bの管理費を立て替えて支払っ
た場合に、Aは、Bに対して有する求償権を有する。この債権は、規約や集会の
決議に基づき他の区部所有者に対して有する債権であり、区分所有者は、この債
権について、債務者の区分所有権及び建物に備え付けた動産の上に先取特権を有
する(区分所有法7条1項)。
×4 誤り。不法な原因のために給付した者は、その給付したものの返還を請求
することができない(民法708条本文)。いわゆる不法原因給付といわれるもので
ある。公序良俗に反する行為(無効な行為である(民法90条))をしておいて、後
で、それは無効だから返せというのは、自ら公序良俗に反する行為をしたことを
主張して法律の保護を受けることになり、不当だからである。だから、不法な原
因が受益者についてのみ存したときは、この限りではないとされている(同ただ
し書)。

【問 4】 正解 3
×1 誤り。Aが甲をBに売ったということは、AB間にマンションについて売
買契約が成立したということである。所有権は、原則として売買契約(物権の移
転の意思表示)のときに移転する(判例、民法176条)。いわゆる意思主義である。
所有権の移転登記は、所有権の移転の要件ではなく、第三者に対する対抗要件で
ある(民法177条)。
×2 誤り。契約を解除した場合、当事者は原状回復義務を負うが、ただし、第
三者の権利を害することができないとされる(民法545条1項)。ここでいう第三
者は、対抗要件を備えていなければならいというのが、判例である。したがっ
て、AがBの代金不払いを理由に売買契約を解除したときには、Aは、Cがマン
ションの移転登記を得ていれば、Cに対抗できないが、移転登記を得ていないと
きは、Cより先に登記をすることによって、マンションの明渡しを請求すること
ができる。
〇3 正しい。賃借人は、賃貸人の承諾がなければ、その賃借物を転貸すること
ができない(民法612条1項)。そして、賃借人が無断で第三者に賃借物を使用又
は収益させたときは、賃貸人は、賃借人との契約を解除できる(同2項)。ただし、
判例は、無断で賃借物を使用・収益させた場合でも、「背信行為と認めるに足り
ない特段の事情があるときには、解除できない」としている。よって、Aは、特
段の事情がない限り、Bとの賃貸借契約を解除し、Cに対してマンションの明渡
しを請求することができる。
 なお、Aは、Bとの契約を解除することなく、Cに対してマンションの明け渡
しを請求できる(判例)。つまり、契約を解除しなければ、Cに対して明渡しを求
めることができないという訳ではない。
×4 誤り。AがマンションをBに賃貸し、Bがそこに居住した場合、Bは、マ
ンションの賃借権について対抗要件を満たしたことになる(引渡しが対抗要件と
なる(借地借家法31条1項))。そうすると、後に、AがマンションをCに売りそ
の旨の登記をCに移転した場合でも、Bは、Cに対して賃借権を対抗できるの
で、マンションを明け渡す必要はない。つまり、Cの明渡しの請求は認められな
い。Cは、Bの賃借権の負担のあるマンションの所有権を取得したことになる。
そして、Cは、所有権の移転登記をしているので、Bに対して賃料の請求ができ
る。

【問 5】 正解 2
×1 誤り。請負契約により瑕疵があるときは、注文者Aは、請負人Bに対し、
相当期間を定めてその瑕疵の修補を請求できる。ただし、瑕疵が重要でなく、
かつ、その修補に過分の費用を要するときには、修補の請求はできない(民法634
条1項)。そして、注文者は、瑕疵の修補に代え、又は修補とともに損害賠償の請
求ができる(同2項)。しかし、「建物その他土地の工作物」の請負契約において
は、瑕疵を理由として契約の解除は認められない(635条ただし書)。
〇2 正しい。請負契約において、工事が完成しない間は、注文者は、いつでも
損害を賠償して契約の解除をすることができる(民法641条)。未完成の間の注文
者の解除権である。注文者が不要と思った工事を完成させる必要がないからであ
る。この場合は、「建物その他土地の工作物」の請負契約においても解除が認め
られていることに注意。
×3 誤り。請負契約により瑕疵がある場合には、建物その他土地の工作物の請
負人は、瑕疵について、引渡しの後5年間(鉄筋コンクリートなどの場合には10
年間)担保責任を負う(民法638条1項)。設問はマンションであるから、通常鉄
筋又は鉄骨造等と思われるので、引渡しから10年間担保責任を負う。
×4 誤り。管理組合法人Aの財産をもって、請負人Bに対する本件工事代金債
務を完済することができない場合には、当該マンションの各区分所有者は、原則
として、共用部分の持分の割合で、債務の弁済義務を負う(区分所有法53条1項、
29条1項)。

【問 6】 正解 3
×ア 誤り。マンション管理業者Bの被用者Cが、その事業の執行について第三
者に損害を与えた場合、Bは、使用者責任を負い(民法715条1項)、Cは、一般
の不法行為責任を負う(民法709条)。
×イ 誤り。竹木の栽植又は支持に瑕疵があることによって、他人に損害が生じ
た場合、第一次的に占有者が責任を負い、占有者が損害の発生を防止するのに必
要な注意をしたときは、所有者が第二次的に責任を負う(民法717条1項、2項)。
管理組合又は組合員は、占有者として、又は所有者として責任を負う。
×ウ 誤り。動物の占有者は、その動物が他人に加えた損害を賠償する責任を負
う。ただし、動物の種類及び性質に従い相当の注意をもって管理したときは、こ
の限りではないとされる(民法718条1項)。Fは、損害賠償請求をその犬の占有
者に対してすることはできないというのは、誤り。
〇エ 正しい。建物の設置又は保存に瑕疵があることにより他人に損害を生じた
ときは、その瑕疵は、共用部分の設置又は保存にあるものと推定する(区分所有法
9条)。この場合には、管理組合又は組合員全員に対して、占有者又は所有者とし
て責任を追及することができる。しかし、設問は、その瑕疵が「専有部分に存し
たときには」とあり、この場合には、当該専有部分の区分所有者に対してのみ損
害賠償請求をすることができる(民法717条1項)。そして、管理組合又は組合員
全員に対してすることはできないことになる。
 以上より、誤っているのは、ア、イ、ウの三つであり、3が正解。

14年02月07日 14時48分26秒
Posted by: mansyonkanrisi

先日、古いパソコンが故障したため、新しいパソコンに変えた。ところが、新し

いパソコンを使って入力する場合、改行を入れると一行開いてしまう。ワード

で入力した文字を貼り付けると。これまた、一行開いてしまう。先日、ブログに

公開した宅建試験の解説やこの管理業務主任者の解説①も文章がずっと

繋がってしまって大変読みづらくなった。管理業務主任者の解説どころでは

なく、この修復やパソコンの使い方と格闘している。

平成26年2月20日

 合格点は32点である。昨年は37点であったから5点も下がった。

数を数え させる問題が大幅に増加した結果である。肢の全てが分らなけれ

ば正解に至らな いので点数が取りにくい問題である。  しかも、問13と問30

は、問題のある問題だ。とりあえず、この二つを解説し て、以下、順番に解

説する。

【問 13】 正解 1

〇ア 適切。建物の建替えに係る合意形成に必要となる事項の調査を行うための費

用は、修繕積立金から取り崩すことになっている(標準管理規約28条1項4号)。そし

て、管理組合は、第28条第1項に定める業務(修繕積立金から取り崩すことができる

業務)にあてるため必要な範囲内において借入れをすることができる(標準管理規約

63条)。ちなみに、この借入金については、修繕積立金をもってその償還に充てるこ

とができることになっている(標準管理規約28条3項)。標準管理規約では、通常の管

理に要する経費(管理費)に充てるための借り入れは認めていないことに注意。

〇イ 適切。駐車場使用料その他の敷地及び共用部分等に係る使用料は、それらの

管理に要する費用に充てるほか、修繕積立金として積み立てるとされている(標準管

理規約29条)。

×ウ 不適切。収支決算の結果、管理費に余剰を生じた場合には、その余剰は翌年

度における管理費に充当することになっている(標準管理規約61条1項)。繕積立金

に充当することはできない。

〇エ 適切。管理費等に不足を生じた場合には、管理組合は組合員に対して第25

条第2項に定める管理費等の負担割合により、その都度必要な金額の負担を求め

ることができる(標準管理規約61条2項)。管理規約で定めているので、一々総会の

決議は必要でない。不足額の負担を確認的に総会の決議にかけても、あえて不当

ともいえないが、それはあくまで確認的なものである。そういう意味であえて不適切

とは言えないというだけのものである。

 以上より、不適切なものは、ウの一つであり、1が正解。

エについて、平成24年度の【問13】の肢1でも同じような問題が出題されている。

どうも、この問題の出題者は、管理費等に不足を生じたときに、組合員に負担を求

める場合には、総会の決議が必要だと誤解しているのではないかと思われる。そう

すると、「管理組合は、管理費等に不足が生じた場合に、総会の決議がなければ、

その都度必要な金額の負担を組合員に求めることができない。」という肢でも、適

と考えているのではないか。

 しかし、これは明らかに誤りである。管理規約で定めているので、一々総会の決

議は必要でない。

 中には、管理費等の額並びに賦課徴収方法については、標準管理規約第48条

3号で総会の議決事項だから、不足額の徴収についても総会の決議が必要だと考

えている人がいるようだ。確かに、管理費・修繕積立金をいくらにするか、その徴収

方法(銀行振込みとか、引き落しとか)はどうするかということは、総会の決議事項で

ある。しかし、管理費等の不足額というのは、管理組合が第三者に負担する債務で

ある。管理費等と明確に区別しなければならない。その債務にあてるために負担額

を求めることは、管理費等の徴収ではない。管理費と管理委託費(これは管理組合

の債務である)との違いと同じようなものだ。つまり、不足額というのは、管理組合の

第三者に対する債務であり、全員が負担割合に応じて債務を負うのであり(区分所

有法29条1項、53条1項)、その都度必要な負担額を支払う義務がある。それを規

約で、組合が各組合員から徴収して支払いにあてることができると定めているので

ある。このように4分の3の決議により成立した規約で定めているのに、総会の決議

(過半数)で否決したら、組合は徴収できないということになるのか。これは明らかに

不当であろう。

 組合に対する債権者(管理会社や大規模修繕をした会社など)は、その不足額に

ついて、各組合員に対して、その負担割合で、支払いの請求や強制執行ができる。

しかし、それは大変面倒なことだから、組合が責任をもって徴収すると規約で定め

ているのである。だから、このような規約の定めのある組合とは、安心して取引が

できるということになる。

【問 30】 正解 1(試験実施期間の発表は2も正解としている)

×ア 不適切。管理組合の業務に関する重要事項については、総会の議決事項

とされている(標準管理規約48条15号)。理事会の決議で行うことができるという

のは、不適切である。

〇イ 適切。理事会は、その責任と権限の範囲内において、専門委員会を設置し、

特定の課題を調査又は検討させることができる(標準管理規約55条1項)。

〇ウ 適切。理事長は、未納の管理費等及び使用料の請求に関して、理事会の

決議により、管理組合を代表して、訴訟その他法的措置を追行することができる

(標準管理規約60条3項)。

〇エ 適切。区分所有者が第6条第1項に規定する行為(建物の保存に有害な行

為その他建物の管理又は使用に関し区分所有者の共同の利益に反する行為)

した場合又はその行為をするおそれがある場合には、他の区分所有者の全員

又は管理組合法人は、行為の停止等(差止請求)を請求できる。この差止請求は、

裁判外(訴訟外)でもできる。この場合、各区分所有者が請求できるのである。総

会の決議や理事会の決議は不要である。ただし、より慎重を期すために理事会の

決議を得て行うことも、あえて不適切とは言えないであろう。しかし、この問題が

「原状回復を請求するには、理事会の決議を得なければできない」と解されるなら、

不適切である。

 訴訟を提起する場合には、必ず総会の決議(普通決議)が必要である(区分所

有法57条2項)。あらかじめ規約で定めておくことはできない。だから、規約で理

事会の議決でできると規定しても、その規約は無効である。設問は、この点は明

確にしていないので、訴訟外と考えて解答すればよい。もし、原状回復の訴訟を

理事会の決議を経て行うことができるとあれば、明らかに不適切である。

※試験の実施機関が、エについて、適切とも不適切ともいえるとして、1と2を正解

としている。だから、1とした人も、2とした人も正解。平成24年度も、答えが2つあ

る問題が2個あった。人がやることだから、ミスはつきものである。ただ、出題者が

本当に分っているのか疑わしいことがある。一度作った問題をその道の専門家に

確認してもらっているのだろうか。国家資格になっているのだから、専門家の目を

通してほしい。

 出題者は、標準管理規約の第67条第3項第1号を根拠にしてこの問題を出題

したのではないかと思われる。そこには、「理事長は、理事会の決議を経て、行為

の差止め、排除又は原状回復のための必要な措置の請求に関し、管理組合を代

表して、訴訟その他法的措置を追行すること」ができると規定している。ここでは、

訴訟についても、理事会の決議を経てできると規定している。これによると、エの

肢は単純に適切となりそうである。

 しかし、この規約の規定は、「規約・使用細則等に違反したときの措置」について

の規定であり、区分所有法第57条でいう区分所有法第6条第1項に規定する行為

(建物の保存に有害な行為その他建物の管理又は使用に関し区分所有者の共同

の利益に反する行為)に関するものではない。この区分所有法第57条の場合には、

訴訟を提起する場合には、必ず、総会の決議が必要であり、規約で理事会の決議

でできると規定しても、その規約は無効だと先に述べた通りである。標準管理規約

のこの規定と区分所有法の57条規定の適用範囲を明確に区別して理解する必要

がある。両者はその守備範囲が異なるのである。

 中には、区分所有法第57条の規定とこの規約の規定とは矛盾しているからこの規

約の規定は無効だという人もいる。しかし、そうではない。ちゃんと適用範囲をすみ分

けしているのである。出題者は、この規約の規定と、区分所有法57条の規定とを明

確に区別せずに出題したのではないかと疑われる。

エースビジネス学院  民本廣則

http://www.acebusinessgakuin.com

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