中国の言う「歴史に学べ」は二重基準(ダブルスタンダード)であり、公平(フェア)ではないと見られるが、前回その点に就いて説明しませんでしたが、中国政府や御用学者に言わせれば、中国の用いる二重基準は公平であり、正しいことになります。何故なら1840年のアヘン戦争以来日本を含む列強諸国に、中国各地があたかも植民地の如き状態にさせられたのは、中国が軍事的にも経済的にも弱く、中国全体としての結束力も弱かったからである。従い中国は強ければ強い程良いのであり、日本等は弱ければ弱い程良いのであり、こうであるのが正しいのだ、となります。思想の自由が保障されている日本には、残念ながら日本国内にも同様に考える一定の勢力が存在します。これが現実です。数年前まで、環境対策についても中国は類似した考え方をしており、次に述べる植民地主義や少数民族問題に対しても、平然と二重基準政策を採用しています。即ち;
1、 近代以降欧米列強諸国は、アジア諸国、アフリカ、中南米等世界各地を植民地として支配してきたのは事実であるが、新中国成立後少なくとも文革時代終了(1976年)までは、欧米列強に反対し原住民側を支持し彼等の独立を支持して来たが、今では逆になってしまった。中国の憲法で最高の指導理念としている毛沢東思想でも、「民族は独立を求めるものであり、幾多の失敗や挫折を経た後に、必ず成功するものでありこれを支持する。」となっているが、中国の少数民族への実際の対応策は逆であることは明白でしょう。
2、 チベット族、ウイグル族、モンゴル族が多く居住する地域は自治区となっているが、毛沢東思想に従って、民族自決を求め独立運動につながるのではないかとの疑念を抱かれただけで反革命、国家反逆罪とされてしまう。憲法でも明記されている毛沢東思想に反するが、ある中国の知識人は平然と「毛沢東思想はアジアアフリカ諸国の民族自決や植民地主義に反対する為に述べたものであり、中国国内には適用されない」と宣(のたま)ったほどである。
3、 更にご都合主義ではないかと見られる重要な点を紹介しましょう。中国は少数民族居住地等で、独立志向と見做せる動きがあれば断固として対処する理由として、歴史的にも中国の一部であったと主張する。然し中国政府公認で出版されている中国歴史地図集(中国地図出版社)によれば、前漢以降中国王朝が強勢だった時だけ、チベット、モンゴル、ウイグル族等の居住地区を支配しており、歴史上の年月の大部分は独立した存在だったことを明記している。
この様に指摘すると、中国政府の政策をバックアップしている学者達は、アメリカ、カナダ、中南米やオーストラリア等、全て原住民ではなく、白人や混血した人種が国家とを形成したではないかと反論する。要は人口比率や力次第ということになる。シベリア東部、極東部は1858年のアイグン条約、1860年の北京条約を強要されロシアに割譲されて現在に至っている。香港同様将来中ロの力関係に大きな変化があると、返還を求めないとは限らない。
4、 この様に力関係の変化次第とも言える政策変更の起点に対して、もう一点中国政府が重視しているのは、植民地主義の現代版とも言える政策である。例えば、内モンゴル自治区の人口は2,500万であるが、既に2,000万以上は漢民族、寧夏回族自治区の人口は600万であるが既に、8割が漢民族となっており、大きな民族問題は起きなくなっている。新疆ウイグル自治区は人口2,200万に対して漢民族は既に41%を超えて増加中、自治区全体のウイグル族はまだ45%居るが全国への分散もあり、比率を下げている。時々民族紛争としてニュースになるカシュガルは自治区西南部の一地域であり、大勢には影響がない。問題はチベットであろう。チベット人は600万近く居るが、約半分は四川省西半分や青海省その他全国各地に散在しており、自治区内には半分強の320万人しか居ない。但し、平均海抜が富士山より高く、気候条件が悪く漢民族の入植も余り進まず一割にも満たない。昔胡錦涛が自治区に赴任しながら、再三体調不良となり、任期中の半分も現地には居なかったと言われるほどである。

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