今後の中国の将来像を描く場合、前回日本の多くの専門家は日本や欧米の常識をベースにして判断する為にミスを犯していると述べたが、もう一点は目先の現象を延長したり、狭い範囲の事象を拡張解釈したりしてはミスを犯すということです。一方中国政府の願望である経済、軍事面でやがてアメリカに取って代わろうとしていることも実現は覚束ないと言えよう。
1. 石炭、セメント、鉄鋼などの生産量が既に過大になっており、第三次産業の発展に注力せねばならないことは、政府首脳も分かってはいるが人口の半分を占める農民を日本並みに5-6%の比率まで下げることも、アメリカ並みの大農業方式にすることも不可能です。良好な農地が少なく農民一人当たりの農地は日本より小さいことに誰も注目しないのが不思議である。
一つハッキリしていることは、従来格安だった農産品の価格の高騰は避けられないでしょう。
2. 中国より人件費が安く人口の多い国々が周辺にあり、当然競合してくるでしょう。インド、インドネシア、パキスタン、バングラデッシュだけでも20億近い人々がおり、その他のアセアン諸国も加えれば優に20億を超過するだけでなく、強敵になるでしょう。中国の欠点はアメリカ同様“自己中”意識が強すぎることです。より高品質、より高技術、より行き届いた製品やサービスを目指している日本は、むしろ先進国のこれからの世界的指標になるでしょう。
3. 左翼とか右翼とかに関係なく、全体主義や独裁主義が時代遅れになっていることに、中国の為政者は気付いていない。この200年世界史的に多くの民族が独立し、人々が自由に政府や政府首脳を批判したり選択したりできる民主主義国家が増えている趨勢に、逆行しようとしても長くは続かないことに気付くべきでしょう。その点中国の憲法でも指導理念にしている毛沢東思想では、「どんなに締め付け、弾圧しても民族の独立と人民の解放は時代の趨勢である」と喝破しているのは蓋し明察と言えるでしょう。
4. 以前にも紹介したが、ある中国の友人は、「中国では政府を批判しない限り、何でもやり放題であり、その上に政治的な自由を日本並みに与えたら、社会は混乱してしまうのは明らかだ」と言ったものだが、それから既に10年余が過ぎている。この間の中国での教育やITの普及は目覚ましいものがあり、世界的な人的交流も大幅に増加しており(アメリカへの留学生も日本の10倍の年間30万人以上)、今後10年以内にも政治改革は避けられないでしょう。世界を知り目覚めた人々は益々増加して、民主主義の自由には責任を伴うことも知るでしょう。
5.現在の中国は上も下も、経済至上主義(向銭看主義)に見えるが、やがては文革前の中国がそうであった様に、モラルを高め、互いに助け合い、周囲へ思いやりを持った生活の方が幸せであると気づくでしょう。昔池田首相がフランスを訪問した折に、「閣下はトランジスタのセールスマンのようだ」と、ドゴールに揶揄されたが、今では世界的に、日本は犯罪が少なく思いやりと「おもてなし」があるモラルとマナーの良い国と評価されるまでになったことも教訓になるでしょう。

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